「治療費はいまかかっているのに、給付金はいつ受け取れるんだろう」「審査は遅いのではないか」「いつ振り込まれるのか」——アスベスト(石綿)の病気で治療中の方やそのご家族から、よくいただくご質問です。
先に結論をお伝えします。審査だけで、最低6か月はかかります。制度によって異なりますが、申請して1〜2か月で支給されるものではありません。だからこそ、「いつ申請を始めるか」が大切になります。
この記事では、次の3点を解説します。
- 申請から受給までの流れ
- 審査期間の目安と、申請を始める時期
- 早く受け取るためにできること
「お金の話を先に聞くのは気が引ける」という方もいらっしゃるかもしれません。ですが、治療費が現にかかっている以上、「いつ受け取れるのか」を確かめるのは自然なことです。順に見ていきましょう。
アスベスト給付金はいつ受け取れる?|審査だけで最低6か月かかります
申請してから受け取るまでの期間は、一概には言えないところがあります。制度によっても異なります。ただ、目安として、最低でも申請から6か月はかかるとお考えください。
申請して1〜2か月で支給されるものではありません
「申請したら、来月には振り込まれるのでは」と期待される方もいらっしゃいますが、申請して1〜2か月で受給できるということは、まずありません。感覚的には、長いと1年ぐらいかかることもあります。本当に早いケースで3か月ということもありますが、1〜2か月というのは、ちょっとないと思っていただいた方がよいです。
だからこそ「いつ申請を始めるか」が大切です
審査に最低6か月かかる以上、申請を始めるのが遅れれば、受け取れる時期もその分だけ後ろにずれます。「いつ受け取れるか」を左右するのは、「いつ申請を始めるか」です。この点は、後ほど「申請を始めるタイミング」の章で詳しくお話しします。
申請から受給までの流れ|4つのステップ
「いつ受け取れるのか」に答えるには、まず申請の流れ全体を押さえていただくのがよいと思います。流れは、大きく4つのステップです。
| ステップ | やること | ポイント |
|---|---|---|
| STEP1 制度選び | どの制度を使うかを決める | 優先順位の判断が重要。まず労災保険が使えないか、という目で見る |
| STEP2 書類準備 | 勤務・ばく露の証拠や医療記録を集め、申請書を作成 | 記録・証拠集めには時間がかかる。早めに動く |
| STEP3 申請 | 制度の窓口へ提出 | 労災保険は労働基準監督署、石綿健康被害救済制度は環境再生保全機構など |
| STEP4 審査 | 審査機関で審査 | 認定されると支給される。ここに最低6か月かかる |
STEP1 制度選び|まず労災保険が使えないか、という目で見る
アスベストの給付金は制度が複数あり、申請には優先順位があります。まず労災保険が使えないかどうか、という目で、どの制度を選ぶのがよいかを見定める必要があります。受け取れるお金の全体像はアスベストで受け取れるお金は6つあります、4制度の優先順位はアスベスト給付金の制度は4つ|どれから申請する?優先順位と併給の可否で解説しています。
STEP2 書類準備|勤務・ばく露の証拠、医療記録、申請書
制度を選んだら、その制度に必要な書類を準備します。勤務・ばく露の証拠や医療記録を集め、申請書も作成していきます。提出する資料の例は、どんな資料を提出するの?をご覧ください。
STEP3 申請|労働基準監督署・環境再生保全機構などへ提出
そろえた書類を、制度の窓口へ提出します。労災保険であれば労働基準監督署、石綿健康被害救済制度であれば環境再生保全機構です。
STEP4 審査|認定されると支給されます
提出すると、それぞれの審査機関で審査が始まり、認定されると支給される、という流れです。冒頭でお伝えした「最低6か月」は、このSTEP4にかかる期間です。つまり、STEP1〜3の準備にかかる時間は、この6か月には含まれていません。
申請を始めるタイミング|治療中なら、とりあえず申請を始める
すでに治療中の方(特に呼吸器系)
呼吸器系の病気で、すでに治療を始めている方は、特に急いでいなくても、また治療費に余裕があるという方であっても、とりあえず申請を始めた方がよいでしょう。
病気は進行していきますし、いつ悪くなるかは分かりません。すでに病気になっているのであれば、準備をどんどん始めていくことをおすすめします。
これから治療という方|病院に行ったタイミングで準備を始める
「ちょっと胸が苦しい」「息切れしやすくなった」という、これから治療という方は、治療を開始したタイミングで申請準備を始めるのがよいと思います。病院に通い始めてちょっと経ったくらいのタイミング、と考えていただければ結構です。
なぜ病院が先か|医療記録がないと認定は難しくなります
理由は、病院に行かないと、医師の意見や医療記録が取れないからです。医療記録がないまま申請しても、認定は難しくなります。ですから、まずは病院に行きましょう、ということが言えます。
「書類がそろわない」で止まらないことがポイント
申請の準備を始めると、「難しいな」と感じる場面が出てきます。いわば「書類の壁」です。ただ、書類がそろわないことで止まらなくてよい、というのがこの手続の良いところです。
事業主証明が取れない|説明文書を添えて提出すれば、審査は始まります
典型例が事業主証明です。労災の申請書には、元の勤務先に「何年から何年まで勤務した」と証明してもらう欄があります。ところが、会社に拒否されたり、会社がすでに廃業していたりして、取れないことがあります。
ここで諦めたり、止まったりする必要はありません。廃業・拒否でも、事情の説明文書を添えて提出すれば受け付けられ、審査は始まります。詳しくは、会社が事業主証明を書いてくれない…それでも労災申請はできますで解説しています。
記録集めに時間がかかる|医療記録・年金記録は早めに収集を
「医療記録を取るのが難しい」「年金記録はどう取ればいいのか」という不安もよくうかがいます。医療記録(保存期間は原則5年)や年金記録の収集は時間がかかることなので、早め早めに動くことが大事です。取り方は、医療記録は自分で取り寄せなくてはいけないのか?と、会社が倒産していてもアスベスト労災は申請できる?|職歴を立証する「年金記録」と身近な証拠で解説しています。
弁護士に依頼する、という選択肢
なお、弁護士に依頼すれば、医療記録などの収集も通常は弁護士側で対応します。当事務所でもそうしています。ご自身で集めるのが難しいと感じたら、依頼するのも一つの手です。
早く受け取るために|労災認定が、建設アスベスト給付金を早く・確実にします
早く受け取るために押さえておきたいのが、労災認定をとにかく優先させることです。
建設業の方は、労災保険と建設アスベスト給付金の両方の可能性があります
建設業でアスベストにばく露した方は非常に多く、労災保険も使えるうえ、建設アスベスト給付金を受け取れる可能性もあります。そして、労災の認定がされていると、建設アスベスト給付金の認定がかなり早く、確実になる傾向があります。
労災支給決定等情報提供サービスで、添付書類・立証を大幅に省略できます
労災支給決定等情報提供サービスを利用すると、建設アスベスト給付金の申請の添付書類・立証を大幅に省略できます。まず労災保険からが原則です。
順番を逆にしない
この順番を逆にしないことも大切です。順番を逆にしてしまうと、3、4年経ってもまだ結果が出ない、というケースもありますので、ご注意ください。
審査を待つ間の治療費はどうなる?
審査を待つ間、その間の治療費はどうなるのだろう、と不安になる方もいらっしゃると思います。制度ごとに見ていきます。
労災保険|労災指定病院なら、支給決定前も窓口負担なしの扱いが一般的
労災保険については、労災指定病院に通っていれば、労災保険の申請書を病院に提出した段階で、支給決定前であっても窓口負担なしの扱いが一般的です。これだけでも、かなり楽になると思います。
石綿健康被害救済制度|認定後は医療手帳で自己負担なし。交付前の分も後から償還
石綿健康被害救済制度の場合は、認定後になりますが、医療手帳が交付され、自己負担がなくなります。そして、認定される前までの期間の自己負担分も、後から戻してもらえます(償還)。ですので、この部分も最終的には心配のいらないところと言えます。
こんな方は、ご相談ください
- これから申請しようとしている・書類の準備で止まっている——「事業主証明はどう書けばいいのか」「書いてもらえなかった」で止まっている方
- 資料収集も含め、自分で申請まで行きつけるか不安——「そもそも何を集めればいいのか分からない」という方
書類で止まってしまったときは、そこで止まるのではなく、詳しい弁護士に相談するというステップを踏んでください。何を集めればいいのか分からない、という段階でも構いません。早めにご相談いただければと思います。
よくある質問
- アスベスト給付金は、申請してからどのくらいで受け取れますか?
-
制度によって異なり、一概には言えませんが、審査だけで最低6か月はかかるとお考えください。感覚的には、長いと1年ぐらいかかることもあります。
- 申請して1〜2か月で振り込まれることはありますか?
-
申請して1〜2か月で支給されるということは、まずありません。だからこそ、いつ申請を始めるかが大切です。治療中の方は、とりあえず申請を始めることをおすすめします。
- 治療費に余裕があります。急いで申請しなくてもよいですか?
-
呼吸器系の病気ですでに治療中であれば、特に急いでいなくても、とりあえず申請を始めた方がよいでしょう。病気は進行していき、いつ悪くなるかは分かりません。審査に最低6か月かかることを考えると、準備は早いに越したことはありません。
- 事業主証明が取れません。申請は止まってしまいますか?
-
止まりません。会社の廃業や拒否で事業主証明が取れなくても、事情の説明文書を添えて提出すれば受け付けられ、審査は始まります。書類がそろわないことで止まらなくてよい、というのがポイントです。
- 審査を待っている間の治療費は、どうなりますか?
-
労災保険の場合、労災指定病院に通っていれば、申請書を病院に提出した段階で、支給決定前でも窓口負担なしの扱いが一般的です。石綿健康被害救済制度の場合は、認定後に医療手帳が交付されて自己負担がなくなり、手帳交付までの間の自己負担分も後から償還されます。
まとめ|審査だけで最低6か月。まず申請の準備から始めましょう
- アスベスト給付金の審査は、審査だけで最低6か月。申請して1〜2か月で支給されるものではない
- 流れは「制度選び→書類準備→申請→審査」の4ステップ。準備の時間は6か月に含まれない
- 呼吸器系の病気で治療中なら、まず申請を始める。これからの方は、病院に行ったタイミングで準備を
- 書類の壁には対処法がある。事業主証明が取れなくても、説明文書を添えれば審査は始まる
- 労災保険を先行させると、建設アスベスト給付金もスムーズに。順番を逆にしない
ご自身やご家族が対象になる可能性があるかは、アスベスト給付金の無料診断でも確認できます。スマホで4問答えるだけで、すぐに診断結果が表示されます(個人情報の入力・登録は不要です)。
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