アスベスト給付金は自分で申請できる?|つまずきやすい5つのポイントと弁護士に相談した方がよいケースを弁護士が解説

「裁判ではなく、行政への申請だから、自分でもできるはず」——そう考えて調べ始めた方から、多くのご質問をいただきます。「会社はもう廃業しちゃったし、証明できるものが何もない」「主治医にアスベストとは言い切れないと言われた」という声も、同じくらい多くうかがいます。

先に結論をお伝えします。ご自身で申請すること自体は可能です。法律で禁止されているわけではありません。一方で、申請の知識がないために救済を受けづらくなってしまうケースがあることも、実務のなかで痛感しています。

この記事では、次の3点を解説します。

  1. 自分で申請できるのか(結論)
  2. 自分で申請するときに、つまずきやすい5つのポイント
  3. 弁護士に相談した方がよいケース

「自分でやるか、頼むか」を決めるのはご本人です。この記事は、その判断材料をそろえるためのものです。自分で申請を考えている方は、ぜひ一度目を通してから始めてみてください。

アスベスト給付金は自分で申請できる?|結論は「申請すること自体は可能」

法律で禁止されているわけではありません

「裁判ではなく、民事訴訟をするわけでもない。行政への申請なのだから、自分で申請すればいいのでは」という疑問は、自分で調べ始めた方からよくいただきます。結論から申し上げると、確かにご自身で申請すること自体は可能です。法律で禁止されてはいません。

ただ、やり方を誤って苦労しているケースをよく目にします

ただ、ご自身で進めた結果、やり方を誤って申請してしまい、認定されなかったり、給付はされたものの給付までに時間がかかりすぎてしまったりしたケースを、私たちはよく目にします。ですから、そこはよく考えたうえで、自分でやるかどうかを決めていただいた方がよいと思います。

私たちは、よく医師の例えをします。手術も、自分ですること自体は法律で禁止されていません。でも、自分でやろうとすると、ものすごく大変ですよね。それと同じことです。

決める前に、5つのポイントをクリアできるかという目で見てください

自分で申請する場合につまずきやすいポイントは、大きく5つあります。「この5つをクリアできるか」という目で見ていただくと、自分でやるかどうかの判断がしやすくなります。次の章で1つずつ見ていきます。

自分で申請するときに、つまずきやすい5つのポイント

ポイントつまずきやすいところ
① 制度選び4制度の優先順位・併給の判断を誤る
② ばく露の立証勤務・ばく露を裏付ける証拠集め
③ 事業主証明会社の廃業・証明拒否で手が止まる
④ 医療記録保存期間(原則5年)の壁がある
⑤ 認定基準医学的な認定基準への当てはめが難しい

① 制度選び|4制度の優先順位と併給の判断

アスベスト給付金には複数の制度があり、どれを選ぶか、どの順番で申請するかの判断が要ります。労災保険を最優先で選んでいるかが、まず確かめていただきたい点です。制度の全体像と優先順位は、アスベスト給付金の制度は4つ|どれから申請する?優先順位と併給の可否で解説しています。

② ばく露の立証|雇用契約書や給与明細がなくても、年金記録などで立証できます

アスベストにばく露したのは、大昔のことです。「〇〇会社で働いていた」ということは、普通は雇用契約書や給与明細で立証するものだと思われがちですが、「そんなものはない」という場合、どうすればいいのでしょうか。

それでも、書類がないからといって諦める必要はありません。会社が廃業していても、年金記録から職歴を立証できることがあります。年金記録(被保険者記録照会回答票)のほかにも方法はあり、書類がなくても立証できることがあります。詳しくは、会社が倒産していてもアスベスト労災は申請できる?|職歴を立証する「年金記録」と身近な証拠をご覧ください。

③ 事業主証明|会社の廃業・拒否でも、説明文書を添えて提出すれば審査は始まります

「証明がない」というもう1つのパターンが、事業主証明です。元の勤務先に「私が働いていた期間を証明してください」と頼んでも拒否される、あるいは会社がもうない。だから申請書の事業主証明欄を埋められない、というケースが多くあります。

この場合も、説明文書を添付して申請すれば受け付けられ、審査は始まります。対処法は、会社が事業主証明を書いてくれない…それでも労災申請はできます|対処法を弁護士が解説で解説しています。

④ 医療記録|保存期間は原則5年。早めに集め始めることが大切です

私たちにご依頼をいただいた場合は、主要な医療記録を基本的にすべて集め、それに基づいて「認定基準を満たしている」という意見書を添えて申請します。その方が、認定の可能性が高まるからです。

ご自身で申請する場合は、医療記録もご自身で集めることになります。ここで、どのような申請にどの医療記録が要るのかが、おそらく分からないと思います。かなりのつまずきポイントだと思います。

そして、医療記録の保存期間は原則5年です。実際にはもっと長く保存している病院もありますが、時間が経つほど集めにくくなります。迷っているうちに、亡くなってから5年ほどで医療記録が破棄されてしまうこともありますので、早めに集め始めることが大切です。取り寄せ方は、医療記録は自分で取り寄せなくてはいけないのか?をご覧ください。

⑤ 認定基準|病名が違っても、対象になることがあります

申請すればよい、というものではありません。認定基準を満たすように証拠を集め、意見書も出して申請することが大切です。認定基準は病気ごとに定まっています。

例えば、「間質性肺炎」という診断名だけでは、対象の病気ではありませんので、それだけでは認定されません。ただ、「実は石綿肺である」ということを、医療記録や医学文献の裏付けをもって説明して初めて、認定の可能性が高まります。「間質性肺炎」などの診断でも、審査の結果、対象疾病に罹患していたと認定されるケースがあるのです。

主治医の診断名が、そのまま結論になるわけではありません。最終的に判断するのは主治医ではなく、国などの審査機関です。胸膜プラークなどの医学的な立証がカギになります。詳しくは、「間質性肺炎」と言われたら”隠れ石綿肺”かもしれないと、胸膜プラークの医学所見は、アスベスト給付金でなぜ重要なのかをご覧ください。

時間にも注意が必要です|審査だけで最低6か月かかります

医療記録を集めるだけで、1〜3か月はすぐに過ぎてしまいます

もう1つの注意点は、時間です。ご自身でやろうとすると、医療記録を集めるだけでも、1か月、2か月、3か月とすぐに過ぎてしまうと思います。その間に、治療中の方は病状が進むこともありますし、時効にかかってしまうこともあります。

申請後の審査だけで最低6か月。給付には時効・請求期限もあります

さらに、申請してからも、審査だけで最低6か月ほどかかります。給付には時効・請求期限もあります。準備の時間と審査の時間の両方を考えたうえで、スムーズに進められそうかを考えていただくとよいと思います。治療中の方は、まず申請を始めることをおすすめします

弁護士に相談した方がよい3つのケース

弁護士に相談した方がよいケースはいくつかありますが、典型的には次の3つです。いずれも、立証の設計が必要になる場面です。

証拠・証明|勤務先が廃業した・証明を断られた・証拠が見つからない

「勤務先がもう廃業してしまった」「証明を断られた」「会社に勤めていた証拠が見つからない」というケースです。こうしたケースでも、「こういうものはありませんか?」と私たちがリストにしてお渡しすると、結構出てきます。例えば、会社の社員旅行の写真です。昔はよく撮っていたと思いますが、それを活用した例もあります。

診断名|対象疾病ではない病名が診断されている(間質性肺炎・肺線維症など)

対象疾病ではない病名しか、まだ診断されていないケースです。典型的には「間質性肺炎」や、それが進行した形の「肺線維症」などです。「病名が違うから対象外だろう」と自己判断で止まってしまう前に、ご相談いただいた方がよいケースです。医師から「申請しても通らない」と言われた場合の考え方は、医師は「申請しても給付金申請は通らない」と言うが、どうすればいい?でも解説しています。

ご遺族|亡くなってから時間が経っている(時効・記録の壁)

ご遺族の方で、亡くなってから時間が経っているケースです。例えば、労災保険ではなく特別遺族給付金を申請した方がよい場合や、期限が迫っているので早めに準備した方がよい場合があります。亡くなってから数年経っているという方は、お早めに弁護士にご相談いただくのがよいと思います。

こんな方こそ、ご相談ください

  1. これから自分で申請しようと調べている——この記事も参考にしながら、「こういうのは自分でできますか?」という段階のご相談で構いません。電話相談もご利用いただけます
  2. 申請の準備を始めたが、書類や立証で止まっている・悩んでいる——「ここはどう書けばいいのか」「この立証はどうすればいいのか」と手が止まっている方

「こんなことで弁護士に相談するのは大げさでは」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、自分でやるかどうかを決める前の段階でのご相談で構いません。相談料・着手金は0円ですので、まず「自分でできそうか」を確かめるためにご利用ください(弁護士費用の詳細は弁護士費用をご確認ください)。

よくある質問

アスベスト給付金は、弁護士に頼まずに自分で申請できますか?

ご自身で申請すること自体は可能です。法律で禁止されているわけではありません。ただし、制度選び・ばく露の立証・事業主証明・医療記録・認定基準の5つでつまずきやすく、やり方を誤ってとても苦労しているケースもよく目にします。この5つをクリアできるかという目で見て、自分でやるかどうかを決めていただくのがよいと思います。

会社がもうありません。勤務していた証拠がなくても申請できますか?

雇用契約書や給与明細がなくても、年金記録(被保険者記録照会回答票)などで立証していける場合があります。会社の廃業や拒否で事業主証明が取れない場合も、説明文書を添えて提出すれば受け付けられ、審査は始まります。

医療記録は、自分で集めなければいけませんか?

ご自身で申請する場合は、医療記録もご自身で集めることになります。どの申請にどの記録が要るのかが分かりにくく、つまずきやすいところです。医療記録の保存期間は原則5年ですので、早めに集め始めることが大切です。弁護士にご依頼いただいた場合は、主要な医療記録を集め、認定基準を満たすという意見書を添えて申請します。

「間質性肺炎」「肺線維症」と診断されています。給付金の対象になりますか?

「間質性肺炎」「肺線維症」という診断名だけでは、対象の病気ではないため、それだけでは認定されません。ただ、実は石綿肺であるということを医療記録や医学文献の裏付けをもって説明することで、審査の結果、対象疾病に罹患していたと認定されるケースがあります。対象疾病ではない病名しか診断されていない段階こそ、ご相談いただいた方がよいケースです。

自分で申請すると、どのくらい時間がかかりますか?

ご自身で医療記録を集めるだけでも1〜3か月はすぐに過ぎてしまうことが多く、さらに申請後の審査だけで最低6か月ほどかかります。給付には時効・請求期限もありますので、治療中の方は、まず申請を始めることをおすすめします。

まとめ|自分で申請すること自体は可能。難所がある場合は、弁護士への相談も選択肢

  • アスベスト給付金は、自分で申請すること自体は可能。法律で禁止されているわけではない
  • つまずきやすいのは、制度選び・ばく露の立証・事業主証明・医療記録・認定基準の5点
  • 書類がなくても諦めなくてよい。年金記録での立証、説明文書を添えた申請という方法がある
  • 医療記録の保存期間は原則5年。審査だけで最低6か月。時間を考えて早めに動く
  • 証拠・証明、診断名、ご遺族の3つのケースは、弁護士に相談した方がよい場面。難所がある場合は、弁護士への相談も選択肢

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