会社が事業主証明を書いてくれない…それでも労災申請はできます|対処法を弁護士が解説

アスベスト(石綿)の病気で労災保険を申請しようとすると、請求書に「事業主証明」という、会社に書いてもらう欄があることに気づきます。ここで「昔の会社に、いまさら頼みごとなんてできない」「頼んでみたが断られた」「会社がもう廃業している」と、申請そのものを諦めてしまう方が少なくありません。

結論からお伝えすると、事業主証明がもらえない場合でも、労災申請はできます。この記事では、次の3点を解説します。

  1. 労災申請の「事業主証明」とは何か
  2. 会社が廃業や証明を拒否…よくある2つのパターン
  3. 証明がなくても申請する方法
目次

労災申請の「事業主証明」とは

労災の請求書にある、会社に証明してもらう欄

労災保険の請求書(遺族補償給付・休業補償給付・療養補償給付など)には、「事業主証明」の欄があります。「この労働者がこの災害に遭いました」ということを、会社に証明してもらうための欄です。

アスベストの場合は「最終ばく露事業場」に依頼するのが原則

アスベストの労災申請では、最後にアスベストを扱う作業をした勤務先(最終ばく露事業場)に証明を依頼するのが原則です。何十年も前の勤務先に連絡することになるケースも珍しくありません。

証明がもらえない…よくある2つのパターン

「会社の証明がもらえません。どうすれば…?」というご相談には、大きく2つのパターンがあります。

  1. 会社が廃業していて、証明欄を埋めてもらう先がない
  2. 会社に証明を拒否された

どちらの場合も、そこで諦める必要はありません。

証明がなくても労災申請はできます

「証明を得られない事情」を書面で説明する

廃業や証明拒否の場合は、その事情を説明する文書を請求書に添えて提出すれば、労災申請ができます。当事務所では「事業主証明欄取得不能の説明書」という独自の書式を用意しており、「証明を頼んだが拒否された」「法人登記を確認したところ、会社は廃業していた」といった事情を説明して添付します。

この説明文書を添付すれば、労働基準監督署にも事情を理解してもらえ、受け付けられれば労災保険の審査は始まっていきます。

証明欄は空欄のままで構わない

説明文書さえ添付すれば、請求書の事業主証明欄は空欄のままで構いません。「あの欄が埋まらないから申請できない」ということはないのです。

提出先は最終ばく露事業場を管轄する労働基準監督署

提出先は、最終ばく露事業場を管轄する労働基準監督署です。ここに、労災保険の請求書と説明文書をあわせて提出します。

「ウチは労災保険に入っていない」と言われても

あわせて知っておいていただきたいのが、会社から「ウチは労災保険に入っていないから、申請できないよ。証明もできないよ」と言われるパターンです。これは誤りです。

会社・法人でも個人事業主でも、労働者を1人でも雇っていれば労災保険は自動的に強制加入で、「未加入」という状態は法的に存在しません。そう言われた場合でも、労災保険の申請はできます。詳しくは「ウチは労災保険に入っていない」は法的にあり得ないもあわせてご覧ください。

こんな方は、ご相談ください

次の2つに当てはまる方は、諦める前に一度ご相談いただくことをおすすめします。

  1. 対象の病気(中皮腫・肺がん・石綿肺・びまん性胸膜肥厚・良性石綿胸水)と診断されている
  2. 勤務先が廃業した・連絡が取れない・証明を断られた

よくある質問

会社が廃業していて事業主証明がもらえません。労災申請はできますか?

申請できます。廃業している事情を説明する文書(事業主証明欄取得不能の説明書など)を請求書に添えて労働基準監督署に提出すれば、受け付けられ、労災保険の審査が始まります。

会社に証明を拒否されました。どうすればよいですか?

拒否された場合も同じで、「証明を依頼したが拒否された」という事情を説明する文書を添付して申請できます。証明欄は空欄のままで構いません。

事業主証明の欄が空欄のままだと、審査で不利になりませんか?

証明欄は最終的に空欄でも問題ないとされています。証明を得られない事情を説明する文書を添付すれば、労働基準監督署に受け付けられ、審査は進んでいきます。

会社から「労災保険に入っていない」と言われました。申請は無理ですか?

申請できます。労働者を1人でも雇っていれば労災保険は自動的に強制加入で、「未加入」という状態は法的に存在しません。

どこに提出すればよいですか?

最終ばく露事業場(最後にアスベストを扱う作業をした勤務先)を管轄する労働基準監督署に、労災保険の請求書と説明文書をあわせて提出します。

まとめ|証明欄が埋まらなくても諦めない

  • 事業主証明は、原則として元の勤務先(最終ばく露事業場)に依頼する
  • 会社の廃業や証明拒否でも、事情を説明する文書を添えて労働基準監督署に提出すれば審査は始まる
  • 証明欄は空欄のままで構わない

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