退職して何十年経ってもアスベストの労災は請求できます|潜伏期間と時効の考え方を弁護士が解説

「辞めたのは30年以上前。いまさら労災なんて…」「何十年も前のことだから、補償してもらえないだろう」——アスベスト(石綿)の病気と診断された方やそのご家族が、こう考えて諦めてしまうケースが少なくありません。

しかし、諦めるのはまだ早いです。退職して何十年経っても、労災保険は請求できます。この記事では、次の3点を解説します。

  1. なぜ退職後の発症が「通常」なのか
  2. 無職・退職後でも給付対象になる
  3. 時効はどこから数えるのか
目次

なぜ退職後の発症が「通常」なのか

アスベストの病気は「遅発性」

前提として、アスベストの病気は「遅発性」の病気とされています。原因物質を吸ってから実際に発症するまでに、非常に長い年月がかかるということです。

アスベストの場合、ばく露から発症まで短くても10年、通常は20〜50年の潜伏期間があるとされています。

発症は50〜80歳代・退職後が典型

そう考えると、たとえば20〜30代でアスベストにばく露した場合でも、発症は30〜40年後が普通です。つまり50〜80歳代、かなりご高齢になってから発症するケースが通常で、これが典型例です。

1960〜90年代に建設業やアスベスト工場などで働いていた方が、長い潜伏期間を経て発症する例が典型的です。労災を請求するのは退職後・高齢になってから、というのがむしろ普通なのです。

無職・退職後でも労災の給付対象になる

「いまは働いていないのに、労災保険が使えるのですか?」「働いている人のための保険では?」という疑問をよくいただきます。

これについては、無職でも問題なく対象です。発症したとき、あるいは発症したあとに無職となっても、要件を満たせば休業補償給付などの対象になります

時効は「退職した日」からは数えない

給付ごとに時効の起算点が決まっている

時効についても、「労災保険は働いているときの保険だから、退職した日から数えるのでは」という勘違いがよくあります。そうではなく、給付ごとに時効の起算点が決まっています

【主要な労災保険給付の時効の起算点】

給付時効の起算点
療養補償給付療養の費用を支出した日(治療費を払った日)の翌日から2年
休業補償給付賃金を受けない日ごとに、その翌日から2年
遺族補償給付亡くなった日の翌日から5年

起算点は治療や死亡などの時点であって、退職から何年経ったかは関係ありません

死亡から5年を過ぎたご遺族には「特別遺族給付金」

遺族補償給付の時効(亡くなった日の翌日から5年)を過ぎてしまった場合でも、救済される制度があります。アスベスト給付金に特徴的な制度で、「特別遺族給付金」といいます。死亡から5年を過ぎたご遺族は、こちらの対象になり得ます。詳しくは、特別遺族給付金とは?労災の時効5年を過ぎても請求できる救済制度をご覧ください。

この2つに当てはまる方は、ご相談ください

次の2つに当てはまったら、労災保険の対象になる可能性があります。

  1. 昔、アスベストを扱う仕事をしていた(何十年前でも構いません)——建設業やアスベスト工場など
  2. 対象の病気(中皮腫・肺がん・石綿肺・びまん性胸膜肥厚・良性石綿胸水)と診断されている

当てはまった方は、「自分も対象では?」という目で、アスベスト給付金に詳しい専門家へ一度確認してみることをおすすめします。

よくある質問

退職して30年以上経っています。労災は請求できますか?

請求できます。アスベストの病気は遅発性で、ばく露から発症まで通常20〜50年の潜伏期間があり、退職後・高齢になってから発症するのが典型です。時効も退職した日からは数えません。

いまは無職ですが、労災保険の対象になりますか?

無職でも問題なく対象です。発症したとき・発症したあとに無職であっても、要件を満たせば休業補償給付などの対象になります。

労災の時効はいつから数えますか?

給付ごとに起算点が決まっています。療養補償給付は治療費を払った日の翌日から2年、休業補償給付は賃金を受けない日ごとにその翌日から2年、遺族補償給付は亡くなった日の翌日から5年です。退職した日は起算点ではありません。

父が亡くなってから5年以上経っています。もう請求できませんか?

遺族補償給付の時効(死亡の翌日から5年)を過ぎたご遺族のために、「特別遺族給付金」という救済制度があります。5年を過ぎていても対象になり得ます。詳しくは、特別遺族給付金とは?労災の時効5年を過ぎても請求できる救済制度をご覧ください。

まとめ|退職後・無職でも「自分も対象では?」という目で

  • アスベスト被害の発症は退職後・高齢になってからが典型(潜伏期間20〜50年)
  • 退職後・無職でも労災の対象になり得る(休業補償給付なども対象になり得る)
  • 時効は退職日からは数えない。遺族は死亡から5年経過後も「特別遺族給付金」がある

制度の全体像は、アスベスト給付金とは?対象者・金額・申請方法・請求期限で解説しています。ご自身やご家族が対象になる可能性があるかは、アスベスト給付金の無料診断でも確認できます。スマホで4問答えるだけで、すぐに診断結果が表示されます(個人情報の入力は不要です)。

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