「間質性肺炎」と診断されている方やそのご家族の中には、「この病気でもアスベスト給付金を申請できるのだろうか」と考えている方がいらっしゃると思います。
結論からいうと、長年アスベスト(石綿)を吸う環境で働いてきた方であれば、申請できる可能性があります。なぜなら、「間質性肺炎」という診断名の中に、アスベストが原因の「石綿肺(せきめんはい)」が隠れていることがあるからです。
この記事では、間質性肺炎という診断名のカラクリ、なぜ「隠れ石綿肺」が生まれるのか、そしてご自身やご家族が確認したい2つのチェックポイントを解説します。
1. 前提: アスベスト給付金の対象になる病気は決まっている
アスベスト給付金は、最終的に対象の病気と診断されなければ支給されません。対象となるのは次の5つの病気です。
- 中皮腫
- 肺がん(原発性肺がん)
- 良性石綿胸水
- びまん性胸膜肥厚
- 石綿肺
このうち、間質性肺炎と深く関係するのが最後の石綿肺です。
※肺がんの「原発性」の意味については原発性肺がんとはで解説しています。
2. 「間質性肺炎」は病気の”大きなくくり”の名前
間質性肺炎とは、肺の「間質」という部分に炎症が起きる病気を広くまとめた呼び方で、ざっくりいえば病気の大きなくくりです。
イメージとしては「がん」と同じです。「がんです」と言われたら「どこのがんですか?」となるように、がんという大きなくくりの中に肺がんや大腸がんがあります。それと同じように、間質性肺炎という大きなくくりの中には、さらに細かい分類があります。
その細かい分類の1つに「じん肺」——粉じんをたくさん吸うことで肺が硬くなってしまう間質性肺炎——があり、じん肺の中でもアスベストが原因のものを特に「石綿肺」と呼びます。つまり、石綿肺はそもそも間質性肺炎の一種なのです。
ちなみに、間質性肺炎の炎症が繰り返されて肺がさらに硬くなり、元に戻らなくなった状態は「肺線維症」と呼ばれます。間質性肺炎が進行して肺線維症と診断されている方もいらっしゃいます。
3. 石綿肺とはどんな病気か
アスベストを大量に吸うと、肺の間質が反応して炎症を起こし、肺が線維化して柔軟性を失っていきます。肺は柔軟性があるから呼吸ができるので、それが失われると呼吸がしにくくなる——これが石綿肺です。
石綿肺は、大量・長期間のばく露で起こりやすい病気です。基本的には10年以上、認定基準上も最低3年以上、建設現場やアスベスト工場などで大量に吸った方がなる病気とされています。少量・短期間のばく露でもなり得るとされる中皮腫とは、この点で対照的です。
また、アスベストの病気に共通する特徴として、潜伏期間が20〜50年と非常に長いことがあります。何十年も経ってから肺の不調が現れるため、何が原因だったのか本人も気づきにくいのです。
4. なぜ「隠れ石綿肺」が生まれるのか
長年建設業に従事していて、アスベストが原因と思われる場合でも、「間質性肺炎」とだけ診断されているケースはよくあります。理由は主に2つです。
理由1: 「間質性肺炎」という診断は間違いではないから
石綿肺は間質性肺炎という大きなカテゴリーに入る病気なので、「間質性肺炎です」という診断は医学的に間違っているわけではありません。そのため、その診断名のまま治療が続いていくことが起こります。
理由2: 原因の特定(鑑別)が一般に難しいから
間質性肺炎には原因不明のもの(特発性間質性肺炎)もあるくらいで、原因がアスベストなのか、ウイルスなのか、膠原病なのか、動物の毛などによるものなのかを特定するのは簡単ではありません。医師が過去にさかのぼって調べられるわけではなく、治療にあたって原因を特定する必要性が乏しいという実情もあります。
こうして、アスベストが原因でも「間質性肺炎」という診断名のまま気づかれない——「隠れ石綿肺」が生まれます。
5. 実際にあった事例|「間質性肺炎」のまま亡くなった後、労災認定へ
当事務所で実際に扱った事例をご紹介します(詳細は一般化しています)。
生前の診断も死亡診断書も「間質性肺炎」だった方のケースです。30年以上、建設現場で現場仕事や現場監督をされていた方でした。主治医に職歴を伝えて石綿肺の疑いを尋ねても、石綿肺との診断はしてもらえませんでした。
お亡くなりになった後、労災保険の認定を求めて申請したところ、労働基準監督署側の医師(労災医)が石綿肺であると診断し、「石綿肺の進行と細菌性肺炎の合併により死亡した」という認定で、労災が認められました。
このほかにも、「間質性肺炎」とだけ診断されていて労災が認定されたケースは当事務所の事例だけでも複数あります。生前や死亡時点で石綿肺と診断されていない——間質性肺炎だけ、肺線維症だけ——という方でも、認定される可能性はあるのです。
6. 心当たりのある方へ|チェックするのは2つ
チェック1: 診断名
- 石綿肺はもちろん、その一種である間質性肺炎、進行した状態の肺線維症——この2つの診断名があったら、石綿肺の可能性を疑ってみてください
- そこまでいかなくても、肺気腫・COPD・胸膜炎という診断でも、石綿肺と認定される可能性はあり得ます
チェック2: 働いてきた環境(職歴)
- 建設現場で何十年も働いていた、解体工をやっていた、アスベスト工場に長年勤めていた——そうしたアスベストの粉じんを吸う環境に長くいた方は、特に注意して確認することをおすすめします
7. 認定されるとアスベスト給付金の対象に
石綿肺などの対象疾病と認定されると、労災保険をはじめとする給付金の対象になります。労災保険の時効(5年)を過ぎてしまった方のための特別遺族給付金、石綿健康被害救済制度、建設業務に従事していた方の建設アスベスト給付金といった制度があり、複数の制度を使えるケースもあります。
制度の全体像はアスベストの給付金は、いつ受給できるのか?とアスベスト給付金とは?対象者・金額・申請方法・請求期限で解説しています。「もう診断名が違うから」と諦めてしまわないことが大切です。

8. よくある質問
- 「間質性肺炎」とだけ診断されています。アスベスト給付金の対象になりますか?
-
間質性肺炎という診断名の中に石綿肺が隠れていることがあります。診断名(間質性肺炎・肺線維症など)と職歴(アスベストの粉じんを吸う環境で長く働いていたか)の2点を確認し、当てはまる場合はご相談ください。
- 主治医が石綿肺と診断してくれません。それでも申請できますか?
-
主治医の診断が間質性肺炎のままでも、労災申請の過程で労働基準監督署側の医師が石綿肺と判断し、労災が認定されたケースが当事務所でもあります。
- どのくらいアスベストを吸っていたら石綿肺になりますか?
-
石綿肺は大量・長期間のばく露(基本的には10年以上、認定基準上は最低3年以上)で起こりやすいとされる病気です。一方、中皮腫は少量・短期間のばく露でもなり得るとされています。
- 亡くなった家族が「間質性肺炎」と診断されていました。今からでも何かできますか?
-
亡くなった後の労災申請で認定された事例があります。労災の時効(死亡から5年)を過ぎている場合も、特別遺族給付金という救済制度があります。詳しくは特別遺族給付金の請求期限が10年延長されましたをご覧ください。
9. まとめ|診断名で諦めず、職歴とあわせて確認を
- アスベスト給付金の対象は5つの病気(中皮腫・肺がん・良性石綿胸水・びまん性胸膜肥厚・石綿肺)
- 石綿肺は間質性肺炎の一種。「間質性肺炎」「肺線維症」という診断名の中に隠れていることがある
- 原因の特定が難しいため、アスベストが原因でも間質性肺炎のまま診断が続くことがある
- チェックするのは「診断名」と「職歴」の2つ
- 石綿肺と診断されていなくても、労災認定された事例がある
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この記事の監修弁護士

弁護士法人シーライト 副代表弁護士
小林 玲生起
神奈川県弁護士会所属。藤沢生まれ、藤沢育ち。アスベスト給付金申請の代理業務については弁護士向け教材の講師を務めるなど、詳しい知識を持つ。

弁護士法人シーライト 副代表弁護士
小林 玲生起
神奈川県弁護士会所属。藤沢生まれ、藤沢育ち。アスベスト給付金申請の代理業務については弁護士向け教材の講師を務めるなど、詳しい知識を持つ。
