アスベスト労災の申請に必要な書類|何を・どこへ・誰が書くのかを弁護士が解説

「アスベストの給付金、特に労災保険は、申請書類がたくさん要りそうで、何から集めればいいのか分からない」——このようなご相談をよくいただきます。役所に出す書類というだけで、何十枚も必要なのではないかと身構えてしまう方は少なくありません。

結論から申し上げると、そんなにたくさん揃えなくても申請できます。労災保険は、まず出して、労働基準監督署に審査を始めてもらうことができる制度です。「揃えてから出す」ではなく「まず出して、審査を始めてもらう」という順番で考えてください。

この記事では、次の3点を解説します。

  1. 請求書の種類(様式)と提出先
  2. 添付書類(療養中の方・ご遺族の方)
  3. 書類が揃わないときの考え方
目次

主な請求書(様式)と提出先

請求するもの様式提出先
治療費(療養補償給付)様式第5号病院に提出。労災指定病院なら病院経由で労働基準監督署へ
休業補償給付様式第8号病院に証明欄を書いてもらい、ご本人が労働基準監督署へ
遺族補償年金様式第12号労働基準監督署へ
遺族補償一時金様式第15号労働基準監督署へ
葬祭料様式第16号労働基準監督署へ

治療費は様式第5号|病院に提出します

治療費を請求する場合は、様式第5号(療養補償給付)を用意します。これは病院に提出する書類で、その病院が労災指定病院であれば、病院から労働基準監督署に提出されます。

休業補償は様式第8号|病院に証明欄を書いてもらって労働基準監督署へ

休業補償を請求する場合は、様式第8号(休業補償給付)です。これも一度病院に提出し、診療担当者の証明欄に記載してもらって戻してもらいます。そのうえで、被害者ご本人が労働基準監督署に提出します。

ご遺族が請求する場合は様式第12号・15号・16号

ご遺族が年金を請求する場合は様式第12号(遺族補償年金)、一時金を請求する場合は様式第15号(遺族補償一時金)を用意し、それぞれ労働基準監督署へ提出します。お亡くなりになっている場合は葬祭料も給付される可能性がありますので、様式第16号も用意します。ご遺族が受け取れる給付の全体像はアスベストで家族を亡くした方へ|ご遺族が受け取れる給付金の種類・金額・請求期限をご覧ください。

療養中の方の添付書類は、意外と少ない

診断書を事前に取る必要はありません

療養中の方の場合、添付書類は意外と少なくて済みます。「診断書が必須だろう」というイメージをお持ちの方が多いのですが、これは特に必要ありません。審査が始まれば、その一環として労働基準監督署が直接に主治医病や労災医員に取り付けることになっているからです。

出しておくとよいのが「年金の被保険者記録照会回答票」

診断書よりも用意した方がよいのが、年金の被保険者記録照会回答票です。必須書類ではありませんが、職歴を示す基礎的な資料になりますので、これを取り付けておくと手続がかなりスムーズになります。年金事務所で取得でき、取り方は過去の勤務先の確認方法~年金の被保険者記録照会回答票の取得~でご説明しています。

様式は厚生労働省のウェブサイトから入手できます

各様式は、厚生労働省の主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)からダウンロードできます。労働基準監督署の窓口まで取りに行く必要はありません。

ご遺族の場合の添付書類|死亡診断書・戸籍謄本・住民票

ご遺族が請求する場合は、療養中の方と違って、そこそこ用意する必要があります。

死亡診断書|手元になければ、病院や役所へ

死亡診断書は必須です。コピーを取っている方が多いのですが、もし無くしてしまった場合は、発行した病院に開示を求めます。病院が閉鎖している場合は、役所に請求していくことになります。

戸籍謄本|配偶者と、子・父母などで必要な範囲が違います

亡くなった方と請求人の関係、つまり自分に請求資格があることを証明するために戸籍謄本が必要です。配偶者の方は同じ戸籍に入っていることが多いため、亡くなった方との戸籍を取れば足りるケースが多くあります。

一方、子・父母・孫などの場合は、改製原戸籍や除籍謄本を遡って取る必要があるケースが多くなります。先順位の方がいないことを示す必要があるためです。

生計維持関係|世帯全員の住民票の写しまたは戸籍の附票

遺族補償年金の場合は、生計維持関係を立証する必要があります。亡くなった方を含む世帯全員の住民票の写し、または戸籍の附票を添付します。

事業主証明欄が埋まらなくても、提出できます

休業補償給付や遺族補償給付の請求書には、事業主の証明欄があります。「こういう労働者が、こういう状況でアスベストにばく露した」と会社に証明してもらう欄です。原則として、最後に石綿ばく露作業をした事業場に証明を依頼します。

ところが、証明してくれないことがあります。廃業してもう会社が無いというケースもあります。ここで諦めてしまう方がいらっしゃるのですが、当法人では「事業主証明欄取得不能の説明書」という独自の書式を使っています。これを添えて申請すれば、審査自体は始まります。

そうした事情ではなく単純に拒否されてしまった場合も、証明欄は空欄のままで構いません。詳しくは会社が事業主証明を書いてくれない…それでも労災申請はできます|対処法を弁護士が解説をご覧ください。

ばく露状況の欄は、最初は簡潔でかまいません

請求書には「災害の原因・発生状況」という欄があり、そこにばく露状況を書きます。何をどこまで書けばよいのか悩まれるところですが、最初は簡潔で構いません。

「○○年頃から○○年頃まで、○○会社の従業員として○○の業務(例:大工・現場監督・電気工事士など)に従事し、○○の作業でアスベストにばく露した」という程度で足ります。

それよりも大事になるのは、提出した後です。労働基準監督署から「アスベスト労災保険申立書」「石綿ばく露歴質問票」などの提出を求められるのが通例で、そこにより詳しく書くことになります。それまでに、勤務先・時期・作業内容と、裏付けとなる資料や証拠を整理して準備しておくことの方が大切です。

医療機関の証明欄|対象疾病の病名でなくても提出できます

休業補償給付などには診療担当者の証明欄があり、記載してもらって提出するのが原則です。望ましいのは、中皮腫・肺がん・石綿肺・びまん性胸膜肥厚・良性石綿胸水という対象疾病の診断名を書いてもらうことです。

しかし、「そこまでは書けない」と医師から言われるケースがあります。その場合は、「じん肺」「間質性肺炎」「肺線維症」「胸膜炎」「慢性肺炎」など、現時点書ける診断名・症状で結構ですとお伝えして書いていただくことが大事です。上記対象疾病の「疑い」でも構いません。労災の対象かどうかを決めるのは主治医の先生ではなく、最終的に労働基準監督署だからです。審査してもらえばよい、ということになります。

それでも、「労災じゃないから書けない」と頑なに拒否される場合もあります。そのときは、「主治医から作成を拒否された」旨の書面を付けて、証明欄を空欄のまま提出することもできます。それでも審査はスタートします。医師に理解を得られない場合の対応は医師は「申請しても給付金申請は通らない」と言うが、どうすればいい?もご覧ください。

申請書類より大切なのは「職歴を示す証拠」

申請書類や添付書類に拘ってしまう方がいらっしゃいますが、それより大事なのは職歴を裏付ける証拠です。

種類具体例
必須年金の被保険者記録照会回答票(勤務先・時期の裏付け)
職種・作業を示す証拠となり得る免許・資格証、作業日報、転職の際に作った履歴書、工事経歴書
身近な証拠社員名簿、住所録、社長からの年賀状、現場や社員旅行の写真、古い通帳の給与入金記録

まず必須になるのが年金の被保険者記録照会回答票です。勤務先や時期の裏付けになるからです。そのうえで、職種や作業を裏付ける免許・資格証、作業日報、履歴書、工事経歴書などがあると強くなります。

こうしたものがなくても、身近なもので裏付けができることがあります。社員名簿や住所録は昔の会社ならよく配っていましたし、社長からの年賀状、現場や社員旅行で撮った写真も証拠になります。古い通帳に、どの会社からいくら給与が払われたかの記録が残っていることもあります。集め方は会社が倒産していてもアスベスト労災は申請できる?|職歴を立証する「年金記録」と身近な証拠で解説しています。

石綿健康被害救済制度は「自分で揃える」制度です

制度による違いにも触れておきます。労災保険では、診断書や医療記録を労働基準監督署が主体的に取り付けてくれます。審査を労基署自身が積極的に進めてくれる制度です。

一方、石綿健康被害救済制度は、医療記録も含めて自分で揃えて申請しなければならない制度です。所定様式の診断書、胸部のX線・CT画像、呼吸機能検査の結果などを申請者側で取り付けて添付します。何を取ればよいのかが分からず、苦労される方が多いところです。

ここの違いが、労災保険を優先して申請することをおすすめする理由の一つでもあります。制度の優先順位はアスベスト給付金の制度は4つ|どれから申請する?優先順位と併給の可否をご覧ください。

こんな方は、ご相談ください

  • 書類を集めきれない方・何を出せばよいのか、これは出してよいのかと悩んで申請が止まっている方
  • ご遺族で、死亡診断書や戸籍の集め方が分からない方。「改製原戸籍とは何ですか」という段階からご相談いただけます

ご自身で申請するかどうかを迷っている方は、アスベスト給付金は自分で申請できる?|つまずきやすい5つのポイントと弁護士に相談した方がよいケースもあわせてご覧ください。相談料・着手金は0円です(弁護士費用の詳細は弁護士費用をご確認ください)。受給の可能性は4タップの無料診断でも確かめられます。

よくある質問

アスベスト労災の申請に、診断書は必要ですか?

療養中の方の場合、診断書を事前に取る必要はありません。審査が始まれば、その一環として労働基準監督署が直接病院や労災医に取り付けることになっているためです。ご遺族が請求する場合は、死亡診断書が必要になります。

請求書の様式は、どこで手に入りますか?

厚生労働省の主要様式ダウンロードコーナー(労災保険給付関係主要様式)からダウンロードできます。治療費は様式第5号、休業補償は様式第8号、遺族補償年金は様式第12号、遺族補償一時金は様式第15号、葬祭料は様式第16号です。

会社が廃業していて、事業主証明がもらえません。

事業主証明欄が埋まらなくても提出できます。「事業主証明欄取得不能の説明書」を添えて申請すれば、審査は始まります。証明を拒否された場合も、証明欄は空欄のままで構いません。

主治医が対象の病名を書いてくれません。どうすればよいですか?

「じん肺」「間質性肺炎」「肺線維症」「胸膜炎」「慢性肺炎」など、現時点で診断できる病名・症状の記載で構いません、上記対象疾病の「疑い」でも構いません、とお伝えして、書いていただくのがよいと思います。労災の対象かどうかを判断するのは主治医ではなく労働基準監督署だからです。それでも拒否される場合は、作成を拒否された旨の書面を付けて空欄のまま提出することもできます。

ばく露状況の欄には、どこまで詳しく書けばよいですか?

最初は簡潔で構いません。「○○年頃から○○年頃まで、○○会社の従業員として○○の業務に従事し、○○の作業でアスベストにばく露した」という程度で足ります。提出後に労働基準監督署から「アスベスト労災保険申立書」「石綿ばく露歴質問票」の提出を求められるのが通例で、そこで詳しく書くことになります。

まとめ|労災保険は、まず出して審査を始めてもらう

  • 請求書は給付ごとに様式が決まっている。主に使うのは様式第5号・8号・12号・15号・16号で、厚生労働省のウェブサイトからダウンロードできる。療養中の方は、診断書の添付は原則不要
  • ご遺族が請求する場合は、死亡診断書・戸籍謄本・住民票が必要。年金の被保険者記録照会回答票は任意だが、取得方法も簡単なので先に出しておく方がよい
  • 証明や診断書が揃わなくても、「取れませんでした」「拒否されました」という説明書を添えれば提出でき、審査は進む。まず出して審査を進めるという気持ちで

書類が揃わないことを理由に申請が止まっている方は、一度ご相談ください。相談料・着手金は0円です。

この記事の監修弁護士

弁護士法人シーライト 副代表弁護士

小林 玲生起

神奈川県弁護士会所属。藤沢生まれ、藤沢育ち。アスベスト給付金申請の代理業務については弁護士向け教材の講師を務めるなど、詳しい知識を持つ。

弁護士法人シーライト 副代表弁護士

小林 玲生起

神奈川県弁護士会所属。藤沢生まれ、藤沢育ち。アスベスト給付金申請の代理業務については弁護士向け教材の講師を務めるなど、詳しい知識を持つ。

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