特別遺族給付金とは?労災の時効5年を過ぎても請求できる救済制度

「父が亡くなってから、もう5年半も経っている。労災の時効は5年だと聞いたから、いまさら請求は無理ですよね」——アスベスト(石綿)の健康被害では、こうしたご相談をいただくことがあります。

たしかに、労災保険の遺族補償給付には5年の時効があります。しかし、アスベストによる健康被害については、時効が完成してしまったご遺族のために「特別遺族給付金」という救済制度が用意されています。「もう時効だから」と諦めてしまう前に、まずこの制度を知ってください。

目次

1. 労災保険の遺族補償給付には「5年の時効」がある

労働者が業務上の病気で亡くなった場合、ご遺族は労災保険の遺族補償給付を請求できます。ただしこの請求権には消滅時効があり、亡くなった日の翌日から起算して5年で時効が完成します。

そのため、亡くなってから5年の間に遺族補償給付を請求していなければ、原則としてもう請求することはできません。

ここで終わってしまうのが通常の労災保険ですが、アスベスト被害の場合は次の救済制度があります。

2. 時効後の救済制度「特別遺族給付金」とは

特別遺族給付金は、石綿による健康被害の特殊性(発症までの潜伏期間が長く、原因に気づかないまま時効を迎えやすいこと)をふまえて設けられた、時効により遺族補償給付の権利を失ったご遺族のための制度です。

2-1. 対象となる方

次のいずれにも当てはまるご遺族が対象です。

  • 労働者(または労災保険に特別加入していた方)が、石綿による対象疾病で亡くなったこと
  • 亡くなった日の翌日から起算して5年が経過し、遺族補償給付の時効が完成してしまったこと

対象となる病気は、いわゆる五大疾病です。

  • 中皮腫
  • 肺がん
  • 石綿肺
  • びまん性胸膜肥厚
  • 良性石綿胸水

なお、「間質性肺炎」や「肺線維症」と診断されていた方の中に、実は石綿肺だったというケースが含まれていることがあります。診断名だけで対象外と決めつけず、働いていた環境とあわせて確認することをおすすめし。ます。

2-2. 給付内容|年金 年240万円・一時金1,200万円

給付の金額は、労災保険の遺族補償給付と違って一律で定められています。

給付の形金額
特別遺族年金年240万円(ご遺族が1人の場合)。受給権がある間、一生涯支給されます
特別遺族一時金1,200万円

年金と一時金のどちらの形になるかは、ご遺族の状況によって決まります。どちらに当てはまりそうかを含めて、個別にご相談ください。

2-3. 認定基準は労災保険に準じる

特別遺族給付金は労災保険の「救済版」ともいえる制度で、石綿による病気かどうかの認定基準は労災保険に準じます。労災認定の実務と地続きの制度のため、資料の集め方・立証の考え方も労災申請と共通する部分が多くあります。

3. 請求期限は2032年(令和14年)3月27日

特別遺族給付金には請求期限があり、2032年(令和14年)3月27日までです。この期限を過ぎると、時効後の救済を受ける道もなくなってしまいますので、ご注意ください。

この期限は、法改正によって10年延長された経緯があります。詳しくは特別遺族給付金の請求期限が10年延長されましたをご覧ください。

4. 「医療記録がもう残っていない」と諦める前に

この制度をご案内すると、よくこう聞かれます。

「亡くなってから5年以上経っているなら、病院のカルテはもう捨てられていますよね。記録がなければ認定されないのでは?」

たしかに、医師法では診療録の保存期間は5年と定められており、5年を過ぎると医療記録が破棄されている可能性は高まっていきます。

ただ、実情を見ると、病院によっては5年より長く保存されているケースがあります。当事務所でも、亡くなってから10年以上(11年近く)経った後に開示申請をしたところ、医療記録がまだ保管されていたというケースがありました。また、病院から「破棄した」と言われていても、労災保険の手続きを通じて照会したところ記録が見つかったというケースもあります。

記録が残っているかどうかは、実際に確認してみないと分かりません。「もう無いはず」という思い込みで諦めるのは早いといえます。

働いていた勤務先の記録についても、年金記録などからたどれる場合があります。詳しくは過去の勤務先の確認方法で解説しています。

5. この2つに当てはまったら、ご相談ください

次の2つに当てはまる方は、特別遺族給付金の対象になる可能性がありますので、一度ご相談いただくことをおすすめします。

  1. ご家族が対象の病気で亡くなった(中皮腫・肺がん・石綿肺・びまん性胸膜肥厚・良性石綿胸水。「間質性肺炎」「肺線維症」の診断だった方を含む)
  2. 亡くなった方が、建設現場や工場など、アスベストの粉じんを吸う環境で働いていた

アスベスト給付金制度の全体像(建設アスベスト給付金・労災保険など他の制度との関係)は、アスベストの給付金は、いつ受給できるのか?で解説しています。

6. 特別遺族給付金のよくある質問

亡くなってから5年以上経っていても、本当に請求できるのですか?

労災保険の遺族補償給付は死亡日の翌日から5年で時効になりますが、石綿による対象疾病で亡くなった場合は、時効完成後でも特別遺族給付金の対象になることがあります。

いくら受け取れますか?

金額は制度上一律で、特別遺族年金は年240万円(ご遺族が1人の場合)、特別遺族一時金は1,200万円です。

病院のカルテがもう破棄されていそうです。それでも申請できますか?

医師法上の保存期間は5年ですが、病院によってはそれより長く保存されているケースがあります。当事務所でも死亡から10年以上経って開示できた例がありました。まずは記録の確認からお手伝いできますので、諦める前にご相談ください。

請求期限はいつまでですか?

2032年(令和14年)3月27日までです。

まとめ|「時効だから」と諦める前に、まず確認を

  • 労災保険(遺族補償給付)の時効は、亡くなった日の翌日から5年
  • ただしアスベスト被害には、時効後でも請求できる「特別遺族給付金」がある
  • 給付内容は年金 年240万円(ご遺族が1人の場合)または一時金1,200万円
  • 請求期限は2032年(令和14年)3月27日
  • 医療記録は5年を過ぎても残っていることがある。諦める前に確認を

ご自身やご家族が対象になる可能性があるかは、アスベスト給付金の無料診断でも確認できます。スマホで4問答えるだけで、個人情報の入力は不要です。

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