体内に胸膜プラークがあることは、過去にアスベストにばく露した決定的な証拠になります。これの調べ方として、胸部エックス線検査、胸部CT検査(HRCT)などがあります。胸膜プラークの有無やその範囲は、肺がんやびまん性胸膜肥厚の認定基準のひとつなので、胸膜プラークの医学所見は、アスベスト被害給付金の申請にあたり極めて重要です。詳しく解説します。
1.胸膜プラーク
医学の辞書などで「プラーク」を調べると、「歯垢」[英plaque]と出てきます。英和辞典でplaqueを調べると、「額、記念の盾、飾り板、血小板、斑、まだら」と出てきます。
胸膜プラークの日本名は、胸膜肥厚斑なので、胸膜がまだらに(不規則に)腫れて厚くなる症状だとわかります。なぜ腫れて厚くなるのでしょうか。 鉱物であるアスベストを吸い込む(ばく露)と肺に刺さり、肺が炎症を起こします。炎症を起こすと、身体は炎症を治そうとして、肺の体液が肺をかさぶたのように厚く覆うため、腫れて厚くなります。
2.胸膜プラークと健康被害
胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)は、アスベストを吸ったことが原因で生じますが、それだけでは健康被害が生じない(良性)とされています。
これに対して、肥厚という点では共通する「びまん性胸膜肥厚」は、アスベストによる健康被害が生じる違いがあります。びまん性胸膜肥厚の認定基準と胸膜プラークの関係については、「5.肥厚の認定基準と胸膜プラーク」で解説します。
3.胸膜プラークの調べ方
胸膜プラークがあるかどうかは、どのように調べるのでしょうか。ご存命の方ですとレントゲン検査である「胸部エックス線」・胸部CT検査(HRCT:High Resolution Computed Tomography、いわゆるハイレゾCTでの撮影が望ましいです)・手術時の目視、お亡くなりになった方ですと、解剖などで胸膜プラークの有無を調べることができます。
3-1.胸部エックス線
胸膜プラークは、レントゲンで白く写ることがあります。胸膜プラークの陰影は、アスベストを吸い込んで(ばく露)から、15年から20年程度を経過して、一部が石灰化した場合に写り、その濃度が増すとともに、拡大していきます。
3-2.胸部CT
CT検査は、レントゲンと同じエックス線を用いますが、輪切りに(断層)にして、撮影する検査方法です。
胸部CT検査では、肺を輪切りにした画像を積み重ねることで、より詳しく肺の健康状態を調べることができます。 胸部CTの胸膜プラーク検出率は、レントゲン(胸部エックス線)の概ね2倍とされています。また、レントゲン(胸部エックス線)よりも詳しい画像を取得できるので、他の病気の検出も期待できます。
4.肺がんの認定基準と胸膜プラーク
アスベスト給付金の一つに労災があります。胸膜プラークの有無は、肺がんの認定と密接に関わります。肺がんの労災認定基準は次のとおり①と②です。
① 胸膜プラーク所見+石綿ばく露作業従事期間10年以上(※1)
② 広範囲の胸膜プラーク所見(※2)+石綿暴露作業従事期間1年以上
(※1)石綿製品の製造工程における作業については、平成8年以降の従事期間は実際の従事期間の1/2として算定します。
(※2)次のいずれかの場合
- 胸部正面XPにより胸膜プラークと判断できる明らかな陰影が認められ、かつ、胸部CT画像によりその陰影が胸膜プラークとして確認される場合
- 胸部CTで、胸膜プラークの広がりが胸壁内部の1/4以上ある場合
肥厚の認定基準と胸膜プラーク
健康な肺は、柔らかく、呼吸すると膨らみます。しかし、肺を包む胸膜が硬く線維化し、呼吸が苦しくなるのが、びまん性胸膜肥厚です。
びまん性とは、比較的均等に広がっている状態です。びまん性の反対は、限局性で「まだら」の意味です。胸膜プラークのように胸膜が腫れて厚くなった状態が「まだら」に広がっているか、広範になっているのかの違いがあります。
びまん性胸膜肥厚の労災認定基準は、次の①~③を全て満たす場合です。
- 石綿ばく露作業3年以上
- 著しい呼吸機能障害(※1)
- 胸部CT画像上、一定以上(※2)肥厚の広がりがあること
(※1)肺活量(%VC)が年齢等から導かれる平均値の60%未満である等
(※2)次のいずれかの場合
- 片側のみ肥厚がある場合…側胸壁の1/2以上
- 両側に肥厚がある場合…側胸壁の1/4以上
おわりに
胸膜プラークの医学的所見は、アスベスト被害給付金の申請にあたり、極めて重要です。
弁護士法人シーライトでは、アスベストを吸い込んで、肺がんやびまん性胸膜肥厚を患った方からのアスベスト給付金の申請実績が多数あります。医師から「胸膜プラークがある」と言われたなど、アスベスト被害者の方から「弁護士との15分無料電話相談」「初回50分無料面談」も承っており、胸部CT画像を持参して頂ければ胸膜プラークの有無の判断も行えます。お気軽にお問い合わせください。
ご家族がアスベストの健康被害でお困りでしたら、アスベスト被害給付金に注力している弁護士法人シーライトの弁護士にお気軽にご相談ください。
この記事の監修弁護士
弁護士法人シーライト
副代表弁護士 小林 玲生起
神奈川県弁護士会所属。藤沢生まれ、藤沢育ち。アスベスト給付金申請の代理業務については弁護士向け教材の講師を務めるなど、詳しい知識を持つ。