1.石綿健康被害救済制度とは
石綿健康被害救済制度は、労災保険の対象とならない方に対し、迅速な救済を図ることを目的とし、「石綿による健康被害の救済に関する法律」に基づき創設されました。
石綿による健康被害を受けられた方、およびそのご遺族で、職業ばく露か否かに関わらず、アスベスト被害全般をカバーするための制度です。労災保険の対象とならないアスベスト健康被害者や、その遺族を対象とします。
この法律に基づき、日本国内において石綿を吸入することにより指定疾病(中皮腫、原発性肺がん、著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺、著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚) にかかり現在療養されている方、これらの疾病に起因してお亡くなりになった方のご遺族が申請・請求することができます。
2.石綿健康被害救済給付の種類
(1)被害者が存命中(治療中)の場合
① 医療費
石綿による指定の疾病に関する医療費の自己負担分が免除されます。(現物支給)
② 石綿健康被害医療手帳が交付されるまでの間の医療費
石綿による指定の疾病に関する医療費の自己負担分が免除されます。(償還払い)
③ 療養手当
入院や通院に伴う諸経費を補償するもの。月額で103,870円となっています。
期間は、指定疾病について療養を開始した月の翌月から療養の間となります。2ヶ月に1度の支給となり、2ヶ月分がまとめて支給されます。
給付の種類 | 給付請求権者 | 支給内容 |
① 医療費 (石綿健康被害医療手帳の提示により、窓口自己負担なし) | 被害者本人 | 指定疾病に関する医療費自己負担部分(現物支給) |
② 石綿健康被害医療手帳が交付されるまでの間の医療費 | 被害者本人 | 指定疾病に関する医療費自己負担部分(償還払い) |
③ 療養手当 | 被害者本人 | 月103,870円を2ヶ月に1回払い |
(2)被害者が死亡した場合
④ 葬祭料
アスベスト被害者がお亡くなりになった場合、葬祭を行った方に対して、一律199,000円が給付されます。
⑤ 救済給付調整金
指定疾病が原因でお亡くなりになった被認定者が給付を受けた医療費・療養手当の合計が特別遺族弔問金の額(280万円)に満たない場合に、その差額が給付されます。
⑥ 特別遺族弔慰金
指定疾病が原因でお亡くなりになった方のご遺族に対し、2,800,000円が給付されます。
給付の種類 | 給付請求権者 | 支給内容 |
④ 葬祭料 | 葬祭を行った人 | 一律199,000円 |
⑤ 特別遺族弔慰金 OR ⑥ 救済給付調整金 | 被害者の死亡当時、被害者と生計を同じくしていた方で 以下の順位の最上位の者。 ①配偶者(内縁を含む) ②子 ③父母 ④孫 ⑤祖父母 ⑥兄弟姉妹 | ⑤被害者が上記①②③の給付を受けずに死亡している場合 →280万円 ⑥被害者が上記①②③の給付を受けてから 死亡している場合 →受け取った(①②医療費+③療養手当)<⑤特別遺族弔慰金=280万円の場合に、その差額 |
3.石綿健康被害救済給付の対象となる疾病・認定基準について
給付の対象となる疾病は、アスベストを吸入することで発症した、以下の通りです。
(1)中皮腫
(2)原発性肺がん
(3)石綿肺
(4)びまん性胸膜肥厚
※良性石綿胸水は、労災保険と異なり、石綿健康被害救済給付の対象外となります。
3-1.中皮腫
中皮腫は、アスベストばく露に極めて関連性の強い疾病です。しかし、診断が非常に困難なため、通常は、病理学的所見なしでは中皮腫と判定することはできないとされています。よって、はっきりとした認定基準はなく、各種検査結果や治療経過などから、総合的に判断されます。
認定されるためには、医学的な根拠が明記された資料を用意する必要があります。特に、アスベスト関連疾患に特異な画像所見である「胸膜プラーク(白板状の肥厚斑)」を確認するため、エックス線の検査結果やCT検査結果の提出は必須となります。また、病理組織診断や細胞診断が必要になることもあります。
3-2.原発性肺がん
肺がんは、他の要因(特に喫煙)によっても発症リスクを高めるものとされています。そのため、肺がんの発症リスクを2倍以上に高める量のアスベストばく露があったと医学的にみなせる場合に、アスベストを吸入することにより発症したと判定するとしています。具体的には下記Ⅰ~Ⅲのいずれかに該当することが認定基準になります。
- 胸部正面エックス線画像により胸膜プラークと判断できる明らかな陰影が認められ、かつ、胸部CT画像によりその陰影が胸膜プラークとして確認されること
- 胸部CT画像で、胸膜プラークの広がりが左右のいずれか一側の胸壁内側の4分の1以上あること
- 乾燥肺重量1g当たり5,000本以上の石綿小体
- 乾燥肺重量1g当たり200万本以上の石綿繊維(5μm超)
- 乾燥肺重量1g当たり500万本以上の石綿繊維(1μm超)
- 気管支肺胞洗浄液1ml中5本以上の石綿小体
- 複数の肺組織切片中の石綿小体※
※複数の肺組織薄切標本において、1標本あたり概ね1本以上の石綿小体が認められる必要があります。
3-3.著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺
石綿肺には、大量かつ比較的長期間のアスベストばく露がないと、発症しないとされています。また、原因不明又は他の原因によるびまん性間質性肺炎・肺線維症との鑑別が重要です。加えて、著しい呼吸機能障害が認定基準に取り入れられているため、次のⅠ~Ⅳすべてを充たすことが認定基準となります。
石綿ばく露作業の従事状況等を「石綿のばく露に関する申告書」(様式第9号)によって判定する。
具体的には、呼吸機能検査の結果、以下の(ア)から(ウ)のいずれかを満たす場合に、著しい呼吸機能障害があると判定される。
(ア)パーセント肺活量(%VC)が60%未満であること
(イ)パーセント肺活量(%VC)が60%以上80%未満であって、1秒率が70%未満であり、かつ、%1秒量が50%未満であること
(ウ)パーセント肺活量(%VC)が60%以上80%未満であって、動脈血酸素分圧(PaO2)が60Torr以下であること、又は、肺胞気動脈血酸素分圧較差(AaDO2)の著しい開大が見られること
胸部CT画像の数年間の経過で判定する。
3-4.著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚の場合
石綿肺と同様の点が医学的判定の注意点とされています。次のⅠ~Ⅳすべてを充たすことが認定基準となります。
石綿ばく露作業の従事状況等を「石綿のばく露に関する申告書」(様式第9号)によって判定する。
具体的には胸部エックス線画像及び胸部CT画像に
- 片側のみ肥厚がある場合…頭尾方向に側胸壁の1/2以上
- 両側に肥厚がある場合…頭尾方向に側胸壁の1/4以上
ただし、胸水貯留のため胸部エックス線画像上に胸膜の肥厚を評価できない場合は、胸部CT画像上から、以下の(a)~(c)すべてが確認できることにより、被包化胸水の所見が確認できるものとし、Ⅱ を満たすと判断する。
(a)胸水の不均一性
(b)胸水貯留部のCrow’sfeetsign(胸膜病変が反映して、肺の中にしわが寄った影のような所見)または円形無気肺
(c)胸水中のエアーまたは胸水量の固定化または胸郭容量の低下
※(c)については、「胸郭容量の低下」のみ認められる場合は、概ね3ヶ月以上の間隔で撮影された2つの胸部CT画像から胸水の量が変化していないと判断できる必要がある。
石綿肺の認定基準Ⅲと同様。
感染症、膠原病、胸部手術後の後遺症などとの鑑別が必要。
4.早めに弁護士にご相談ください
石綿健康被害救済給付制度の申請をすることにあたり、一般の方が認定基準を満たしていると証明するための医学的資料を一から集めることは、困難なものであると考えられます。認定に必要な医学的資料を確実かつ迅速に準備するためにも、早期にアスベスト給付金申請を専門とする弁護士にご相談ください。
この記事の監修弁護士

弁護士法人シーライト
副代表弁護士 小林 玲生起
神奈川県弁護士会所属。藤沢生まれ、藤沢育ち。アスベスト給付金申請の代理業務については弁護士向け教材の講師を務めるなど、詳しい知識を持つ。