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裁判まではしたくない

当事務所では、「給付金の申請をすると裁判所に行くのか?」とご質問をいただくことがよくあります。

アスベスト被害に関する給付金は裁判とどう違うの?

裁判ではないので、裁判所には行きません。

アスベスト被害に関する給付金とは何か

アスベスト被害者向けの給付金の仕組みとして、一番近いイメージは、労働災害の労災保険や交通事故の自賠責保険です。

労災保険は労働基準監督署が、自賠責保険は自賠責保険会社が、独自に損害・保険金の算定をして、労災や交通事故の被害者に保険金を支払います。当然ですが労災や自賠責は裁判所ではないので、申請をしても裁判所には行きません。

給付金にはいくつか種類があります。例えば、建設アスベスト被害給付金は「石綿にさらされる建設業務に従事した労働者・一人親方・中小事業主等が、石綿を吸入することにより発生する疾病にかかり、精神上の苦痛を受けたことについて、最高裁判決等において国の責任が認められたことに鑑み、被害者の方々へ損害の迅速な賠償を図る」制度です。

給付金は、迅速な賠償を目指しており、書類審査主義です。裁判と比べるとスピーディーに損害賠償(金)を請求できます。

アスベスト被害救済裁判(民事訴訟)とは何か

アスベスト被害者が国や建材メーカーを訴えたアスベスト関連の裁判をニュースで目にすることがあります。裁判(民事訴訟)というのは、裁判所が法律を使って、法律問題を最終的に解決する手続きのことです。裁判では、裁判官に対して、自分のアスベスト被害を直接訴えることができます。

しかし、厳格な手続きにのっとって、公平かつ慎重に手続きをするので、どうしても時間やお金もかかりますし、被害者の言い分からだけでなく証拠(主に書面)による立証が必要になるため認めてもらうにはハードル高く、労力がかかります。

アスベスト被害に関する給付金と裁判の違い

アスベスト被害給付金申請
アスベスト被害の損害賠償訴訟
共通点アスベスト被害者の救済アスベスト被害者の救済
根拠法①労働者である時に業務でアスベストにばく露した⇒労働者災害補償保険法(労災)
②労働者・一人親方・中小事業主である時に屋内の建設業等の作業でアスベストにばく露した⇒建設アスベスト救済法
③アスベスト関連疾患被害者一般⇒石綿健康被害救済法
国に対して⇒国家賠償法
勤務先に対して⇒民法、労働契約法
方式
救済を行う機関
支払われる金額
行政による書類審査
①労基署(厚生労働省):遺族補償給付は給付基礎日額の153日分~/年。他の給付内容は、労災保険給付内容の一覧②厚生労働省:最大1300万円
③環境再生保全機構(環境省):存命(治療中)の場合は療養手当月額約10万円、死亡の場合は約300万円。詳しくは、石綿健康被害救済制度の給付要件・給付内容
裁判
裁判所
支払われる金額は、裁判所の判断により異なるが、最大1300万円の慰謝料
メリット・解決までの時間が裁判に比べると短い。
・裁判に比べると、費用が安価。
・裁判に比べると、求められる資料が少なめであり、かつ定型的=労力が小さめ 。
・特に、労災保険の場合には、労基署自らが一定程度調査をしてくれる。
・文書での主張に加えて、法廷で自分の被害状況や思いを主張することができる。
・個別事情を具体的に考慮してくれる可能性がある。
デメリット・書類審査なので、診断書や申請書の内容にもとづく定型的な審査が中心となる。
・個別事情はほぼ考慮してくれない。
・解決まで1年以上を要することがある(特に、書類による立証ができない又は困難な案件)。
・損害を証明するための診断書代などに加えて、裁判所に納める収入印紙代や切手代などが別途かかる。
・裁判所自らが積極的に調査したり、証拠を収集してくれることは、ほとんどなく、被害者が自ら証拠を収集できなければ、敗訴してします。

まとめると、上の図のようになります。