アスベスト給付金に時効はある?|制度ごとの請求期限と2027年の法改正を弁護士が解説

亡くなって5年経ってもあきらめるな画像
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「発症してから、もしくは亡くなってから、だいぶ時間が経ってしまった。もう5年も経っている。もう時効で、給付金なんて申請できないのでは」——そう考えて申請を諦めてしまう方が、少なくありません。

先にお伝えしたいことが2つあります。1つは、期限は制度ごと・給付ごとに数え方が違うということ。もう1つは、起算点は「アスベストにばく露した日」ではないということです。この2つを知らないまま、まとめて諦めてしまう方が多いのです。

この記事では、次の3点を解説します。

  1. 労災保険の時効(2年・5年)と、2027年の法改正
  2. 特別遺族給付金・石綿健康被害救済制度・建設アスベスト給付金の請求期限
  3. 「もう時効かも」と思ったときに確認すること

労災保険の時効は、給付の種類ごとに2年または5年

給付の種類時効起算点
療養補償給付(治療費)2年療養の費用を支出した日の翌日から
休業補償給付2年賃金を受けない日ごとに、その翌日から
障害補償給付5年治ゆ日(症状固定日)の翌日から
遺族補償給付5年亡くなった日の翌日から
葬祭料2年亡くなった日の翌日から

まず押さえていただきたいのが、労災保険の時効は給付の種類ごとに違うということです。短いもので2年、長いもので5年あります。2年はあっという間に過ぎてしまいますが、亡くなってから5年は、意外とまだ間があると感じられる方も多いはずです。

2027年4月から、療養・休業・葬祭料の時効が5年に延びます

改正労災保険法が2027年4月1日に施行されます

上の表の2年というのは、今の制度の話です。この点について重要な法改正がありました。令和8年法律第60号として公布された改正労災保険法により、療養補償給付・休業補償給付・葬祭料の時効が2年から5年に延びます。施行は2027年(令和9年)4月1日、公布は2026年7月17日です。

対象は、疾病の性質上、労災かどうかを容易に判断できない疾病として政令で定めるものです。石綿関連疾病のほか、脳・心臓疾患や精神疾患が想定されています。根拠となるのは労災保険法42条1項ただし書で、障害補償給付・遺族補償給付の5年は従来どおりです。なお、施行日前に発生した疾病については経過措置がありますので、ご自身の場合については個別にご確認ください。

影響が大きいのは休業補償給付です

この改正の影響は非常に大きいと考えています。特に大きいのが休業補償給付です。アスベスト労災の休業補償給付は年200万円から300万円ほどになることも多く、請求できる期間が2年から5年へと、単純計算で2.5倍になります。これまで時効で失われていた分まで請求できるようになりますので、忘れずに請求していきましょう。

起算点は「ばく露した日」ではありません

治療費・休業補償は、日ごとに時効が進みます

治療費や休業補償給付は、費用を払った日・休んだ日ごとに起算します。そこから2年です。裏を返せば、治療が続く限り新しい請求権が日々生まれているということになります。

遺族補償は、亡くなった日の翌日から5年

遺族補償給付は、亡くなった日の翌日から5年です。発症日や退職日ではありません。ご遺族が受け取れる給付の全体像はアスベストで家族を亡くした方へ|ご遺族が受け取れる給付金の種類・金額・請求期限で解説しています。

退職後、何十年経っていても同じです

退職して何十年経っていても、数え方は変わりません。労災保険は使えます。この点は退職して何十年経ってもアスベストの労災は請求できます|潜伏期間と時効の考え方を弁護士が解説で詳しく解説しています。

遺族補償の5年を過ぎても|特別遺族給付金があります

特別遺族給付金は、労災保険の特別バージョンといえる制度です。遺族補償給付の消滅時効を過ぎてしまった方を救済するために用意されています。

ですから、5年を過ぎてしまっても特別遺族給付金を請求できます。年金であれば遺族1人で年240万円、一時金であれば1,200万円です。請求期限は2032年3月27日までですので、ここはさすがに超えないように押さえてください。制度の詳細は特別遺族給付金とは?労災の時効5年を過ぎても請求できる救済制度をご覧ください。

石綿健康被害救済制度の請求期限は、病気によって違います

病気請求期限
中皮腫・肺がん最も早くて2032年3月27日
石綿肺・びまん性胸膜肥厚最も早くて2036年7月1日

石綿健康被害救済制度の請求期限は、病態によって違います。発症・死亡の時期や法改正との関係で変わりますので、ご自身の期限は個別にご確認ください。

建設アスベスト給付金の請求期限は20年|起算点は存命か死亡かで違います

建設アスベスト給付金の請求期限は20年です。起算点が、存命の場合と亡くなった場合で違います。

  • 存命の場合|医師に対象疾病と診断された日から起算します。石綿肺の方でじん肺管理区分の決定を受けている場合は、その決定日との遅い方が起算点になります
  • 亡くなった場合|病態に関係なく、死亡日から起算します

制度の内容は建設アスベスト給付金とは?|対象となる職種・時期と金額(最大1300万円)を弁護士が解説をご覧ください。

見落としがちな請求|亡くなってから2年未満なら、未支給の休業補償給付も

亡くなってから2年未満で労災保険が使えるとなった場合、未支給の休業補償給付をご遺族が請求できます。亡くなった方が生前に請求していなかった分です。

これは金額としてかなり大きくなります。給付基礎日額(平均賃金)は1万円ほどと認定されることが多く、肺がんや中皮腫の方は働けませんから、365日すべて労働不能と認定されます。療養開始から亡くなるまでの分がまとめて給付されますので、数百万円になることもあります。忘れずに請求してください。

請求期限・消滅時効とあわせて意識したい「医療記録の保存期間」

法令上の保存期間は、最後の入通院から5年

ここまでが各制度の請求期限・消滅時効ですが、これとあわせて意識していただきたいのが医療記録の保存期間です。たとえば死亡日から20年という期限があっても、医療記録が確保できないと認定されないことがかなりあるためです。

法令上、カルテや医療画像は最後の入通院から5年間、病院に保管されています。医療記録の取り寄せについては医療記録は自分で取り寄せなくてはいけないのか?をご覧ください。

実際には、5年よりもう少し長く保管されている病院もあります

実際には、5年が過ぎてももう少し長く保管されているケースがあります。病院ごとの規定で10年間と定められていることも多いようです。当法人では、亡くなってから約11年後に開示された事例もありました。ただし、同じ結果が保証されるものではありません。

ですから、「請求期限・消滅時効がまだ来ていないから大丈夫」ではなく、早めに早めに収集を始めることが大切です。

「もう時効かも」と思ったら|3つの確認

① 制度と時効を分ける|まとめて諦めない

制度ごと・給付ごとに時効が違います。「時間が経ったからだめだ」とまとめないことです。1つの給付が時効でも、別の給付や別の制度では期限内ということがあります。

② 日付を確認する|診断日・症状固定日・死亡日

診断日・症状固定日、そして死亡日を確認します。起算点になる日付ですので、きちんと控えておいてください。

③ 早めに相談する|医療記録の確保が実は重要です

医療記録の確保は、消滅時効以上に重要になることがあります。医療記録の保存期限が近い場合や、亡くなってから10年近く経ってしまったという場合は、早めに弁護士にご相談いただくのがよいと思います。

こんな方は、ご相談ください

  • アスベスト関連疾患の発症・死亡から年数が経っていて、まだ申請していない方・申請しようかどうか悩んでいる方
  • 「時効だから無理」と言われてしまった方・無理ではないかと思っている方。ご遺族の方も、ぜひご相談ください

相談料・着手金は0円ですので、「自分の場合、どの給付が期限内なのか」を確かめるためにご利用ください(弁護士費用の詳細は弁護士費用をご確認ください)。受給の可能性は4タップの無料診断でも確かめられます。

よくある質問

アスベストの労災保険に時効はありますか?

あります。給付の種類ごとに違い、療養補償給付・休業補償給付・葬祭料は2年、障害補償給付・遺族補償給付は5年です。ただし2027年4月1日施行の改正労災保険法により、療養補償給付・休業補償給付・葬祭料の時効は、政令で定める疾病について2年から5年に延びます。石綿関連疾病はその対象として想定されています。

時効はアスベストにばく露した日から数えるのですか?

ばく露した日からではありません。治療費や休業補償給付は、費用を払った日・休んだ日ごとに起算します。遺族補償給付は亡くなった日の翌日から、障害補償給付は治ゆ日(症状固定日)の翌日から起算します。退職して何十年経っていても、数え方は変わりません。

亡くなって5年以上経っています。もう請求できませんか?

労災保険の遺族補償給付は5年で時効になりますが、それを過ぎた方のために特別遺族給付金があります。年金なら遺族1人で年240万円、一時金なら1,200万円で、請求期限は2032年3月27日です。また、建設アスベスト給付金は死亡日から20年、石綿健康被害救済制度にもそれぞれ期限があります。

2027年の労災保険法改正で、何が変わるのですか?

令和8年法律第60号による労災保険法改正により、療養補償給付・休業補償給付・葬祭料の時効が2年から5年に延びます。施行日は2027年4月1日です。対象は、疾病の性質上、労災かどうかを容易に判断できない疾病として政令で定めるもので、石綿関連疾病のほか脳・心臓疾患、精神疾患が想定されています。施行日前に発生した疾病については経過措置がありますので、個別にご確認ください。

期限内なら、急いで動かなくても大丈夫ですか?

期限とは別に、医療記録の保存期間という壁があります。法令上の保存期間は最後の入通院から5年です。医療記録が取れないために認定されないことがかなりありますので、請求期限がまだ来ていない場合でも、早めに収集を始めることをおすすめします。

まとめ|制度ごとに数え方が違う。日付の確認と医療記録の収集を早めに

  • 労災保険の時効は給付ごとに2年か5年。2027年4月からは、療養・休業・葬祭料も対象疾病では5年に延びる
  • 遺族補償給付が5年を過ぎても、特別遺族給付金を2032年3月27日まで請求できる。石綿健康被害救済制度・建設アスベスト給付金にも、それぞれ期限がある
  • 死亡日の確認と医療記録の収集は早めに。請求の期限は来ていないけれど、医療記録がなくて不支給になってしまったというケースは実際にある

「もう時効だろう」とご自身で判断してしまう前に、どの給付が期限内かを一度ご確認ください。相談料・着手金は0円です。

この記事の監修弁護士

弁護士法人シーライト 副代表弁護士

小林 玲生起

神奈川県弁護士会所属。藤沢生まれ、藤沢育ち。アスベスト給付金申請の代理業務については弁護士向け教材の講師を務めるなど、詳しい知識を持つ。

弁護士法人シーライト 副代表弁護士

小林 玲生起

神奈川県弁護士会所属。藤沢生まれ、藤沢育ち。アスベスト給付金申請の代理業務については弁護士向け教材の講師を務めるなど、詳しい知識を持つ。