「勤めていた会社はとっくに倒産した」「上司や同僚とはもう連絡が取れない」「働いていたことを示す書類なんて何も残っていない」——アスベスト(石綿)の労災申請のご相談では、こうした理由で「職歴の立証なんてもう無理ですよね」と諦めてしまっている方が少なくありません。
なかには、社長から「ウチは労災保険に入っていないから無理だよ」と言われていた、という方もいらっしゃいます。
結論からお伝えすると、どちらのケースも、それだけで諦めるのはまだ早いといえます。この記事では、次の3点を解説します。
- 会社がもうなくても労災申請ができる理由
- 職歴立証の出発点になる「年金記録」
- 年金記録が足りないときに使える、身近な証拠
会社が倒産していても労災申請できる理由
労災保険は「労働者を1人でも雇えば」強制加入
まず、労災保険の仕組みからご説明します。労災保険は、労働者を1人でも雇っていれば、自動的に強制加入となる制度です。これは会社(法人)に限らず、個人事業主が人を雇っている場合も同じです。
事業主が「入るか、入らないか」を選べる制度ではありません。労働者を雇った時点で、法的には「労災保険に入った」ものとして扱われます。
「ウチは労災保険に入っていない」は法的にあり得ない
強制加入である以上、労災保険法上、「労災保険に入っていない」という状態は法的に存在しません。社長からそう言われていたとしても、それは事業主が加入手続きを怠り、保険料を払っていなかったというだけのことです。
したがって、「労働者」として働いていたと認められれば、労災保険は使えます。給与や書面上は「下請け」「外注」として扱われていても、実態に照らして「労働者」と認定される例もあります。また、会社がその後倒産・廃業していても、申請自体は可能です。問題は「そこで働いていたこと(職歴)をどう立証するか」に移ります。
職歴立証の出発点は「年金記録」
年金記録(被保険者記録照会回答票)でわかること
職歴を立証するスタートラインになるのが、年金記録(正式には「被保険者記録照会回答票」)です。厚生年金に加入していた場合、「何年から何年まで、どの会社に勤めていたか」が記録されています。
雇用契約書や給与明細が手元に残っていなくても取得できる公的な記録で、勤務先の記載があれば、それ自体が職歴の良い証拠になります。まずは年金記録を取ってみることが第一歩です。取り寄せ方は過去の勤務先の確認方法で解説しています。
「全期間、国民年金」と書かれていた場合
一方で、実際に年金記録を取ってみたら「全期間、国民年金」とだけ書いてあった、というケースも多々あります。厚生年金には加入しておらず、会社の名前がどこにも出てこないパターンです。
この場合でも、すぐに諦めるのは早いといえます。年金記録が使えないときは、次にご紹介する「身近な証拠」の出番です。
年金記録が足りなくても|自宅にある「何気ないもの」が証拠になる
厚生年金の記録がなくても、ご自宅にある「何気ないもの」が職歴の証拠になることがあります。たとえば次のようなものです。
- 社員旅行や現場の写真(「○○会社 △△年 熱海旅行」のように会社名や年が書き込まれた写真、現場で何気なく撮ったスナップ写真など)
- 年賀状(社長や同僚から届いたもの)
- 社員名簿・住所録(昔は個人情報の扱いが今よりゆるやかで、手元に残っていることがあります)
- 履歴書・工事経歴書のコピー(転職のときに書いたものの控え)
- 古い通帳の給与入金記録(その会社からの入金が残っていることがあります)
こうした証拠をかき集めて職歴を立証していくことを、当事務所でも実際によく行っています。
当事務所の事例|「下請けだから労働者性がない」と主張された塗装工の方
身近な証拠で職歴を立証した実例として、20年以上勤めていたのに年金記録だけでは立証できなかった塗装工の方のケースをご紹介します。
ご相談時の状況
- 年金記録は「国民年金」とだけ記載(厚生年金には未加入)
- 勤務先は廃業したのか営業しているのかも分からず、申請の段階では電話もつながらない
- 申請してみると、会社側は「従業員ではなく下請けなので、労働者性がない」と主張
ご家族と集めた3つの証拠
そこで、先ほど挙げたような証拠を「何でもいいので集めてください」とご家族にお願いしたところ、次のような証拠が見つかりました。
- 社長と一緒に写った社員旅行らしき写真
- 大量の給料明細——出勤日数や残業手当の記載がありました。出勤日数が管理され、残業もしているというのは労働者的な働き方であり、良い証拠になります
- 健康保険の書類——業界団体系の健康保険で、加入区分を調べるとまさに「雇用されている者」となっており、有力な証拠になりました
証拠の意味合いを意見書にまとめて労働基準監督署へ
これらの証拠を積み上げ、「この証拠にはこういう意味合いがある」ということを意見書にまとめて労働基準監督署に提出していった結果、労働者性が認められ、労災が認定されたケースがあります。
どれか1つの証拠だけで決まるものではなく、「何が証拠になりそうか」の見極めと積み上げ方が大切です。
この2つに当てはまる方は、ご相談ください
次の2つに当てはまる方は、諦めてしまう前に一度ご相談いただくことをおすすめします。
- 対象の病気(またはその疑い)と診断されている——中皮腫・肺がん・石綿肺・びまん性胸膜肥厚・良性石綿胸水。「間質性肺炎」や「肺線維症」と診断された方も、石綿肺の可能性があります
- 勤務先が倒産・廃業していて、働いていたことを証明する書類が手元にない
アスベスト給付金制度の全体像(労災保険・特別遺族給付金・建設アスベスト給付金など)は、アスベスト給付金とは?対象者・金額・申請方法・請求期限で解説しています。
よくある質問
- 会社が倒産していても労災申請はできますか?
-
できます。労災保険は労働者を1人でも雇っていれば強制加入となる制度で、会社がその後倒産・廃業していても申請は可能です。「労働者」として働いていたこと(職歴)をどう立証するかがポイントになります。
- 個人事業主のもとで働いていた場合も労災保険の対象ですか?
-
労災保険の強制加入は会社(法人)に限らず、個人事業主が労働者を1人でも雇っている場合も同じです。「労働者」として働いていたと認められれば、労災保険は使えます。
- 社長から「ウチは労災保険に入っていない」と言われていました。
-
労災保険法上、「労災保険に入っていない」という状態は法的に存在しません。それは事業主が加入手続きや保険料の納付を怠っていたというだけで、労働者と認められれば労災保険は使えます。給与や書面上は「下請け」「外注」として扱われていても、実態に照らして「労働者」と認定される例もあります。
- 雇用契約書も給与明細も残っていません。職歴はどうやって証明するのですか?
-
まず年金記録(被保険者記録照会回答票)を取得して、勤務先の記録を確認します。記録が出ない場合でも、写真・年賀状・社員名簿・履歴書の控え・通帳の入金記録など、身近なものが証拠になることがあります。
- 年金記録が「国民年金だけ」でした。もう無理でしょうか?
-
厚生年金の記録がなくても、身近な証拠を積み上げて職歴や労働者性を立証し、労災が認定されたケースがあります。諦める前に、証拠になりそうなものの見極めからご相談ください。
まとめ|書類がなくても、諦める前にご相談を
- 雇用されている場合、労災保険に「未加入」という状態は法的に存在しない(強制加入)
- 職歴立証の出発点は「年金記録」。契約書や給与明細が残っていなくても取得でき、勤務先の記載があればそれ自体が良い証拠になる
- 年金記録が「国民年金だけ」でも、写真・給料明細・通帳など身近なものが証拠になることがある
- 証拠の見極めと積み上げ方は専門的な判断になるため、専門家への相談がおすすめ
ご自身やご家族が対象になる可能性があるかは、アスベスト給付金の無料診断でも確認できます。スマホから4回タップするだけで、すぐに診断結果が表示されます。
弁護士法人シーライトでは、アスベスト給付金・労災申請に関する無料相談(電話15分・面談50分)を全国対応で受け付けています。ご依頼いただく場合の弁護士費用は、相談料・着手金0円の完全成功報酬制です(報酬の内訳は弁護士費用をご確認ください)。
アスベスト被害者・ご家族限定
ご自身・ご家族が給付金の受取基準を満たしているか
弁護士と15分無料で
電話相談してみませんか?
\ お問い合わせは全国対応しています /
