アスベスト(石綿)健康被害の給付金制度は、1つではありません。主に4つの制度があり、当事務所では「4大制度」と呼んでいます。
そして大事なのは、どの順番で申請するかです。目についた制度から適当に申請するのではなく、優先順位を踏まえて進めることで、受け取れるものを取りこぼしにくくなります。
この記事では、4つの制度の内容と、申請の優先順位、併給(2つの制度から受け取ること)の可否、税金・審査期間までを解説します。損害賠償も含めた全体像は、アスベストで受け取れるお金は6つありますをご覧ください。
1. 前提: 対象になる病気は5つ
どの制度も、対象になる病気が決まっています。次の5つです。
- 中皮腫
- 肺がん
- 石綿肺
- びまん性胸膜肥厚
- 良性石綿胸水
ただし、最後の良性石綿胸水だけは、石綿健康被害救済制度の対象外です。ここだけ注意してください。
なお、「間質性肺炎」や「肺線維症」と診断されている方の中に、実は石綿肺だったというケースが含まれていることがあります。詳しくは「間質性肺炎」と言われたら”隠れ石綿肺”かもしれないをご覧ください。
2. 4つの制度をひとつずつ解説
| 制度 | 主な対象 | 給付内容(主なもの) |
|---|---|---|
| ①労災保険 | 労働者(一人親方も特別加入していれば対象) | 休業補償・療養補償(治療費)など。死亡の場合は遺族補償給付・葬祭料 |
| ②特別遺族給付金 | 死亡から5年で労災(遺族補償給付)が時効になったご遺族 | 年金 年240万円〜 または一時金1,200万円 |
| ③石綿健康被害救済制度 | 働き方を問わず、対象疾病にかかった方(良性石綿胸水は対象外) | 治療費の自己負担なし +月約10万円の療養手当。 死亡の場合は280万円+葬祭料約20万円 |
| ④建設アスベスト給付金 | 一定期間に建設業務に従事した方(一人親方・中小事業主も含む) | 病態に応じて550万〜1,300万円 |
2-1. 労災保険
まず基本となるのが労災保険です。対象者は労働者。そして見落としがちですが、一人親方の方でも、労災の特別加入をしていれば対象になります。
給付内容は、休業補償や療養補償(治療費)など。お亡くなりになった場合には、遺族補償給付や葬祭料も給付されます。
2-2. 特別遺族給付金
労災保険の「特別バージョン」と考えてください。亡くなってから5年が経ち、労災の遺族補償給付が時効になってしまったご遺族を救う制度です。
給付内容は、年金の場合は年240万円(ご遺族数よってはもう少し多くなることがあります)、または一時金1,200万円です。請求期限が2032年3月27日までと決められているので、ご注意ください。詳しくは特別遺族給付金とは?労災の時効5年を過ぎても請求できる救済制度で解説しています。
2-3. 石綿健康被害救済制度
この制度は、労働者かどうかといった働き方の属性では対象が決まっていません。対象の病気にかかった方が対象です(前述のとおり良性石綿胸水は対象外)。
給付内容は、その病気に関する治療費の自己負担がなくなることに加えて、月約10万円の療養手当が支給されます。お亡くなりになった場合には、280万円と約20万円の葬祭料が支給されます。
2-4. 建設アスベスト給付金
一定の期間に建設業務に従事していた方——大工さん・解体工の方など——が対象の制度です。労災保険と違い、労働者だけでなく一人親方や中小事業主の方も対象に含まれます。
給付内容は病態に応じて最低550万円〜最大1,300万円です。注意点として減額の仕組みがあり、たとえば肺がんで認定された方で長年喫煙していた場合は1割減額されることがあります。対象要件や金額区分の詳細は、建設アスベスト給付金の被害者向けの給付内容について、建設アスベスト給付金の遺族向けの給付内容についてをご覧ください。
3. どれから申請する?優先順位の考え方
4つの制度は、目についたものから適当に申請してよいものではありません。順番の考え方は次のとおりです。
- まず労災保険。時効(死亡から5年)で逃してしまった場合は特別遺族給付金
- 労働者ではない・特別加入もしていないなど、労災が難しそうな場合は石綿健康被害救済制度
- 1か2のどちらかが認定された後に、建設アスベスト給付金を申請する
繰り返しになりますが、労災保険を通すことが非常に大事で、最優先で申請していくのが基本です。
4. 併給できる組み合わせ・できない組み合わせ
申請の順番に加えて、「両方もらえるもの」と「片方だけしかもらえないもの」があることも知っておいてください。
- 労災保険 × 石綿健康被害救済制度: 併給できません(労災保険が優先)
- 建設アスベスト給付金: 労災保険とも、石綿健康被害救済制度とも併給できます
片方を申請して終わりにせず、建設業務に従事していた方は建設アスベスト給付金も忘れずに申請していくことが大事です。
5. おさえておきたい2つのポイント
ポイント1: 給付金に税金はかからない
給付金には所得税はかかりませんし、相続税の対象になることもありません。
ポイント2: 審査には最低でも6ヶ月ほどかかる
申請してすぐに給付されるわけではなく、審査には最低でも6ヶ月ほどかかると考えておいてください。いま治療中の方も、期間を見越して早め早めに準備を進めることが大事です。審査期間の目安はアスベスト給付金はいつ受給できるのかでも解説しています。
6. よくある質問
- 4つの制度は同時に受け取れますか?
-
組み合わせによります。労災保険と石綿健康被害救済制度は併給できません(労災優先)が、建設アスベスト給付金はどちらとも併給できます。
- どれから申請すればいいですか?
-
まず労災保険(時効の場合は特別遺族給付金)、労災が難しい方は石綿健康被害救済制度、そのどちらかの認定後に建設アスベスト給付金、という順番が基本です。
- 給付金に税金はかかりますか?
-
所得税はかからず、相続税の対象になることもありません。
- 申請してからどのくらいで受け取れますか?
-
審査には最低でも6ヶ月ほどかかると考えて、早めに準備を始めることをおすすめします。
まとめ|4つの制度と「労災優先」を覚えておく
- アスベスト給付金の制度は4つ: 労災保険・特別遺族給付金・石綿健康被害救済制度・建設アスベスト給付金
- 対象の病気は5つ(良性石綿胸水だけは救済制度の対象外)
- 申請には優先順位がある。労災保険を通すことが最優先
- 建設アスベスト給付金は他の制度と併給できる
- 審査は最低6ヶ月ほど。早め早めの準備を
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