「建設業向けの給付金があると聞いた。でも、どこに何を出せばいいの?」——建設アスベスト給付金について、このようなご相談をよくいただきます。
建設アスベスト給付金は、建設の仕事のなかでアスベスト(石綿)を吸い込み、対象の病気にかかった方のための給付金制度です。請求のしかたは、労災の認定があるかどうかで2つに分かれます。
この記事では、次の4点を順に整理します。
- 対象になる方・時期・職種と、給付金額
- 労災保険・石綿健康被害救済制度との関係(併給できます)
- 2つの請求ルートと、それぞれで集める書類
- 書類がそろわないときの考え方と、提出から支給までの流れ
労災保険・救済制度・損害賠償も含めた全体像は、アスベストで受け取れるお金の全体像をご覧ください。
建設アスベスト給付金とは
建設業に従事していた方のための給付金制度
建設アスベスト給付金は、その名のとおり、建設業に就いていた方を対象とした給付金制度です。建設の仕事のなかでアスベストを吸い込み、対象の病気にかかった方に、病態に応じた給付金が支給されます。
「労働者」だけでなく、一人親方や中小事業主も対象
この制度の大きなポイントは、労災保険と違って「労働者」だけが対象ではないことです。労働者はもちろん、一人親方や、一定規模以下の中小事業主・法人代表者も対象に含まれます。
「雇われていたわけではないから」と諦めていた方も、建設業務に従事していたのであれば、対象になる可能性があります。
国への訴訟の判決をもとにできた制度で、請求に裁判は要りません
この制度は、建設アスベスト訴訟の最高裁令和3年5月17日判決民集第75巻5号1359号がもとになっています。国への損害賠償訴訟で、最高裁が、一定職種の一定期間に一定作業をしていた方への国家賠償を認めました。それをもとに、法律でつくられた制度です。
そのため、請求に裁判は要りません。この制度の手続きに沿って、厚生労働省へ請求します。給付金と損害賠償の違いは、アスベストの賠償金と給付金の違いで解説しています。
対象となる時期と作業
対象となる時期と作業は、次の2つに分けられています。
| 時期 | 作業 |
|---|---|
| 1972年10月〜1975年9月 | 石綿の吹付け作業に係る建設業務 |
| 1975年10月〜2004年9月 | 一定の屋内作業場で行われた作業に係る建設業務 |
多いのは、屋内作業をしていた方です
石綿の吹付け作業をしていた方もいますが、それよりも多いのは、建設業の屋内作業をしていた方です。心当たりのある方は、まず時期をご確認ください。
対象とされている職種の例
対象とされている職種の一例です。
- 大工
- 左官
- 鉄骨工
- 溶接工
- 塗装工
- 内装工
- 吹付工
- 解体工
- 配管設備工
- 電工(電気工事士)
- 現場監督
これはあくまで一部で、このほかにも多くの職種が対象とされています。建設アスベスト給付金認定審査会の審査方針には、屋内作業に従事していたと判断できる職種の一覧があります。
職種は、資格証などで示していきます
大工・内装工・左官・現場監督など、自分がそうした職種だったことを、免許・資格証・教育証・表彰状などで示していくことになります。
造船・鉄道車両の作業は対象外とされています
造船・鉄道車両に関する作業の従事者は、実質的には似た作業でも、建設アスベスト給付金の対象外とされています。この方々が使える制度は、建設アスベスト給付金の対象外の業種と、使える制度で解説しています。
給付金額は病態に応じて550万〜1300万円
給付金額は、病態に応じて次のように定められています。
| 病態 | 給付金額 |
|---|---|
| 石綿肺(じん肺管理区分2・3) | 550万〜950万円(じん肺法施行規則2条1項2号所定の合併症の有無で変わります) |
| 中皮腫・肺がん・管理区分4の石綿肺・著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚・良性石綿胸水 | 1150万円 |
| 死亡の場合 | 1200万〜1300万円 |
※金額は支給額の最大値です。喫煙習慣その他の減額事由があります。
金額は「最大値」である点に注意
上の金額は、支給額の「最大値」です。たとえば長年の喫煙習慣がある方の肺がんの場合には1割減額される、といった減額事由が定められています。
実際の金額は、病態やご事情によって変わります。
労災保険・救済制度と併給できる
建設アスベスト給付金は、労災保険、または石綿健康被害救済制度と併給できます。どちらか一方だけではなく、どちらも、という考えで進めるとよいと思います。
すでに労災保険の認定を受けている方も、建設業に携わっていたなら「こちらも対象では?」という目で確認してください。制度の優先順位は、アスベスト給付金の4つの制度と申請の優先順位で解説しています。
請求のしかたは、労災の認定があるかどうかで2つ
ここからは、請求のしかたです。請求ルートは次の2つです。
| ルート | 対象になる方 | 請求のしかた |
|---|---|---|
| ルートA(労災の認定あり) | 労災保険(または特別遺族給付金)の認定を受けた方 | 情報提供サービスで通知書を取り寄せてから請求 |
| ルートB(労災の認定なし) | 労災の認定を受けていない方(特別加入していない一人親方など) | 通常請求で、書類を集めて請求 |
どちらのルートでも、請求先は厚生労働省です。
当法人では、ルートAで進められないかを最優先で考えます
当法人がおすすめしているのはルートAです。添付書類や証明の多くが原則不要になるため、ルートAで進められないかを考えることが非常に大事です。
ご相談の時点では、労災の認定がまだの方がほとんどです
当法人へのご相談では、その時点でまだ労災の認定を受けていない方がほとんどです。そのため、まず労災の申請を進め、認定を受けてからルートAへ、という流れが多くなっています。
ルートを選ぶ前に|建設業でも、まず労災保険を検討する
会社に雇われていた方
会社に雇われていた方で、まだ労災保険を請求していないなら、先に労災保険の請求を検討します。労災の認定を受けると、情報提供サービス(ルートA)を申し込めます。
ただし、建設アスベスト給付金の請求期限が近い方は、この限りではありません(請求期限は後の章で説明します)。
「一人親方」「下請け」とされていた方
一人親方や下請けとして扱われていた方は、「労災は使えないのでは」と感じていることが多いと思います。しかし、働き方の実態によっては、労働者として労災保険を検討できることがあります。
ポイントは、会社との間に指揮命令・監督の関係があったかどうかです。これを「労働者性」といいます。会社が実際に労災保険に入っていたかどうかよりも、この点が大事になります。そういう関係だったのであれば、まず労災保険を検討します。
ルートA|労災の認定がある方は、情報提供サービスで通知書を取り寄せる
労災支給決定等情報提供サービスとは
労災の認定がある方は、厚生労働省の「労災支給決定等情報提供サービス」を使えます。名前に「等」が付いているのは、労災保険を補う制度である特別遺族給付金も含まれているためです。利用は無料です(申請書を送る郵便代は自己負担です)。
申し込みのしかた
申請書に、本人確認書類の写し・住民票の写しなどを添えて、厚生労働省へ郵送します。ご遺族の場合は、関係を示す戸籍謄本なども必要です。住民票の写しや戸籍謄本は、申請前30日以内のものに限ります。
届く通知書に書かれること
届く通知書には、病気(疾病名・診断日)、喫煙の習慣、就労歴と、アスベストを扱う作業(石綿ばく露作業)に従事した期間が書かれています。
特に大事なのは、石綿の吹付け作業・屋内作業に当たるかどうか、つまり建設アスベスト給付金の要件に当たるかの判断も書かれることです。判断が「該当」であれば、建設アスベスト給付金の請求をスムーズに進められます。なお、吹付け作業・屋内作業に当たるかの最終的な判断は、認定審査会が行います。
通知書が届くまでに、請求書を準備しておく
通知書を待つ間に、請求書(情報提供サービス利用者用)に記入しておきましょう。比較的形式的に書け、手引きを見ればかなり分かります。通常請求になっても、準備は無駄になりません。
届いたら、交付番号を書いて通知書のコピーを添える
通知書の右上に交付番号が書いてあるので、それを請求書に書き、通知書のコピーを添えて提出します。そうすると、診断書や、通常請求で必要な就業歴等申告書など、添付書類や証明の多くが原則不要になります。
情報提供を受けられないときは、通常請求へ
「情報を提供できない」という通知が届いた場合や、建設アスベスト給付金の対象期間に当たるという判断がない場合は、通常請求(ルートB)で請求します。
ルートAでは、申請から2〜3か月で支給されることが多い
当法人の弁護士の経験では、情報提供サービスを使うルートAの場合、申請から2〜3か月で支給されることが多いです。ただし、審査にかかる期間は事案によって異なります。
ルートB|労災の認定がない方は、通常請求で書類を集める
労災の認定がない方は、「通常請求」で請求します。厚生労働省が出している手引きを見ながら、書類を集めて進めていきます。主に必要になるのは、次の3つです。
| 必要なもの | 内容 |
|---|---|
| 病気の証明 | 医療機関に、医療記録の開示と、病気に応じた様式の診断(意見)書の作成を頼む |
| 就労歴 | 就業歴等申告書に、働いた事業場・期間・作業の内容を具体的に書く |
| 住民票・戸籍 | 住民票の写し(ご遺族は戸籍謄本など)。発行から3か月以内のもの |
病気の証明|診断(意見)書と医療記録
病院に、病気に応じた様式の診断(意見)書を作成してもらいます。胸部XPや胸部CT画像なども付けるため、医療記録の開示も行っておく必要があります。
なお、労災保険や救済制度の給付を受けている方は、決定通知書の写しで、診断書などの医学的な資料を省略できます。
就労歴|就業歴等申告書に具体的に書く
就業歴等申告書には、すべての就労歴と、そのなかで特にアスベストに触れた事業場・期間・作業の内容を、具体的に書いていきます。
住民票・戸籍|発行から3か月以内のもの
住民票の写し、ご遺族の場合は戸籍謄本などを添付します。発行から3か月以内のものが必要です。情報提供サービスの申し込み(申請前30日以内)とは期限が違うので、ご注意ください。
書類がそろわないときの考え方
通常請求では、書類がそろわないことがあります。そうした書類は、事情を伝えて出す方法があります。
間に合わない書類は、後から追加できることがあります
原則は、添付書類も請求書と一緒に出します。ただ、請求期限が迫っている、証明してくれる方と今やり取りをしているなど、事情があれば、今ある書類で先に出し、後から追加できます。その場合は、添付書類の一覧表の「伝達事項」の欄に、その旨を書いておきます。
就労歴の証明は、集めにくく、かつ重要です
当法人の弁護士の経験では、通常請求で集めにくく、かつ重要なのが就労歴の証明です。就業歴等申告書(通常請求版)の別紙(通-様式3別紙)の証明欄がこれに当たります。
事業主や元同僚、一人親方の方なら発注者・元請けなどに、可能な限り証明をお願いし、この証明欄に書いてもらいます。
就労歴を示すのに役立つ資料
就労歴を示すのに役立つ資料には、次のようなものがあります。
- 年金の記録
- 工事の契約書・注文書(発注書)
- 確定申告書(一人親方の方は、個人事業主としてのもの)
- 作業日報
- 建設業の免許・資格証・教育証・表彰状
- 現場の写真
- 在籍した会社や取引先、ご自身で設立した会社の登記簿
年金の記録で職歴を示す方法は、年金記録による職歴の立証で解説しています。
求められた書類が最後まで出ないと、却下されることもあります
後から追加できるとはいえ、求められた書類が最後まで出ないと、請求が却下されることもあります。この制度は「書類が命」と考えていただくのがよいと思います。理由は、次の章で説明します。
提出から支給までの流れ
請求書は厚生労働省へ出し、審査は認定審査会が行います。流れは次の3段階です。
提出|厚生労働省へ、届いたことを確認できる方法で郵送
請求書と添付書類を、厚生労働省へ郵送します。簡易書留やレターパックなど、記録が残り、届いたことを確認できる方法で出すと安心です。
審査|認定審査会が、主に書面で審査します
厚生労働省が受け付け、実質的な審査は「特定石綿被害建設業務労働者等認定審査会」という審査会が行います。
審査会が事情を聞くことは基本的に想定されておらず、集めた書面だけでほとんど審査・認定されます。書類上の証明がないと、なかなか認定されません。これが「書類が命」の理由です。審査の途中で、追加の資料を求められることもあります。
認定・支給|結果は書面で届きます
審査の結果に基づいて厚生労働大臣が認定し、結果は書面で届きます。認定されると、給付金が支給されます。
審査で主に見られること
審査では主に、時期と作業・職種・病気が要件に当たるかを見られます。
時期と作業・職種
1972年10月〜1975年9月の石綿吹付け作業、または1975年10月〜2004年9月の屋内作業場での作業に当たるかを見られます。職種は、審査会の審査方針にある「屋内作業に従事していたと判断できる職種」に当たるかがポイントです。
病気|医学的な基準は、労災の認定基準とほぼ同じ
対象の病気は、中皮腫・肺がん・石綿肺・びまん性胸膜肥厚・良性石綿胸水です。病気は医学的な基準を満たす必要がありますが、その基準は労災の認定基準とほぼ同じです。基準の中身はアスベスト労災の認定基準、病気ごとの症状はアスベストでなる病気と症状で解説しています。
あわせて確認したいこと
請求期限|医師の診断日など(亡くなった方は死亡日)から20年
建設アスベスト給付金は、医師の診断日など(亡くなった方は死亡日)から20年以内に請求する必要があります。制度ごとの期限の数え方は、アスベスト給付金の時効と請求期限で解説しています。
ご遺族|請求できるのは、最先順位の方
ご遺族が請求する場合、請求できる順位が決まっています。配偶者(内縁を含みます)・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹の順番のうち、最先順位のご遺族が請求できます。
注意点は、労災保険の受給権者と一致しないことがあることです。ご遺族が受け取れる給付の全体は、ご遺族が受け取れる給付金の種類と請求期限をご覧ください。
こんな方は、ご相談ください
- 労災の認定を受けたが、建設アスベスト給付金はまだ請求していない方
- 一人親方などで、就労歴を示す書類がそろわず、準備が止まっている方
- 対象の期間(1972年10月〜2004年9月)に建設の仕事をしていて、対象の病気と診断されている方(ご遺族を含みます)
ご自身で請求する場合の手順と注意点は、建設アスベスト給付金を自分で申請するときの手順・注意点で解説しています。相談料・着手金は0円です(弁護士費用の詳細は弁護士費用をご確認ください)。受給の可能性は4タップの無料診断でも確かめられます。
よくある質問
- 一人親方でも建設アスベスト給付金の対象になりますか?
-
対象に含まれます。建設アスベスト給付金は労災保険と違い「労働者」だけが対象ではなく、一人親方や、一定規模以下の中小事業主・法人代表者も対象に含まれます。なお、働き方の実態によっては、労働者として労災保険を先に検討できることがあります。
- 建設アスベスト給付金はどこに請求しますか?裁判は必要ですか?
-
請求先は厚生労働省で、請求書と添付書類を郵送します。国への損害賠償訴訟の判決(最高裁令和3年5月17日判決民集第75巻5号1359号)をもとにできた制度で、請求に裁判は要りません。
- 労災の認定を受けています。何から始めればよいですか?
-
労災支給決定等情報提供サービス(厚生労働省・無料)で通知書を取り寄せます。交付番号を請求書に書き、コピーを添えて請求すると、添付書類や証明の多くが原則不要になります。
- 勤務先がもう無く、就労歴の証明をもらえません。どうすればよいですか?
-
元同僚や発注者・元請けなどに、可能な限り証明をお願いします。もらえないときは、証明者の欄にその旨と事情(会社の倒産など)を書きます。年金の記録や建設業の資格証なども、就労歴を示す資料として役立ちます。
- 給付金額はいくらですか?
-
病態に応じて550万〜1300万円と定められています(石綿肺の管理区分2・3は550万〜950万円、中皮腫・肺がんなどは1150万円、死亡の場合は1200万〜1300万円)。ただしこれは最大値で、喫煙習慣その他の減額事由があります。
- 請求してから支給まで、どのくらいかかりますか?
-
当法人の弁護士の経験では、情報提供サービスを使うルートAの場合、申請から2〜3か月で支給されることが多いです。審査にかかる期間は事案によって異なります。
まとめ|請求は2つのルート。まず労災保険を検討し、書類で示す
- 一人親方・中小事業主も対象になり得る。金額は病態に応じて550万〜1300万円(最大値。減額事由あり)。労災保険・救済制度と併給できる
- 請求は、労災の認定があるかどうかで2つのルート。まず労災保険を検討する。認定があれば通知書を取り寄せ、添付書類や証明の多くが原則不要に
- 書類がそろわないときも、事情を伝えて出す方法がある。審査は認定審査会が主に書面で行う
建設の仕事に心当たりがあり、対象の病気と診断されている方は、ご家族の方も含め、お早めにご相談ください。相談料・着手金は0円です。
